もくじ
「社会調査・アンケート調査とデータ解析」を元に要約メモしておきたいと思います。主に、郵送でのアンケート調査に関する内容です。
アンケート用紙の基本構成
- あいさつ部
アンケートの回答者が最初に読むあいさつの部分。調査の目的や用途などの調査の趣旨、調査の重要性、調査へのご協力のお願いについて丁寧に記述する。調査に対する必要性の理解や信頼が得られなければ、回答してもらえなかったり、回答がいい加減になったりする。 - 質問本体部
質問と回答で構成される。わかりやすく答えやすいように、質問の順序、言葉づかい、回答方法を工夫し、回答時間があまりかからないように設計する。 - フェイスシート部分
回答者の住所、氏名、性別、職業などの個人情報を記述する部分。最後に質問することが望ましく、個人情報を保護するように確約することも重要。
質問の順序を決める
テーマに関するさまざまな事実を量的に把握しようとするのがアンケート調査なので、テーマに関わりのありそうな項目を列挙して回答するようにすればいいけど、それだけでは十分な回答を期待することはできない。そこで、できるだけ体系づけて調査項目を設定することは必要になる。方法は以下の2つ。
- いくつかの大項目と、その中の中項目をあげ、それらの相互関係を考慮しながらそれぞれ細目としての質問項目を検討し、設定していく。
- 具体的な質問項目を思いつくままにあげていき、それを中項目と大項目にまとめ、最後に大項目間の関連を検討して設定する。
前者は、テーマに関する質問内容がある程度検討がつく場合で、後者はそうでない場合に適している。質問の順序は以下のように考えるとよい。
- 簡単でやさしい質問から始める
- 興味をひく質問から始める
- 質問は論理的な順序で展開させる
- 一般的質問から、個別的・具体的質問へと展開させる
- 事実に対する質問は先に、意識に対する質問は後にする
- 質問の流れがわかりやすくなるようにする
質問の量を調整する
アンケート用紙に質問の量は、多ければ回答者が面倒になり回収率の低下をまねくが、質問が少なくて回答が簡単であれば満足な調査結果が得られないことになる。同様に、詳細な回答を得るために自由記述を多くすると回収率は低下し、選択肢を多様すれば特徴のない典型的なものになってしまう。
質問と回答のタイプを決める
質問のタイプ
- 自由回答型質問
自由に回答してもらうタイプの質問。回答は文字や数字など。 - プリコード質問型
番号や記号のついた選択肢から回答してもらうタイプの質問。
回答のタイプ
- 自由回答
文字や数字などで自由に回答。 - 2肢択一式回答
2つの選択肢の中から1つを選んで回答 - 多肢択一式回答
多数の選択肢の中から1つを選んで回答 - 多項目選択式回答
多数の項目の中から複数個を選んで回答。無制限に選ぶ・選択肢に制限がある・順位を示すなどがある。
回答は数量化する
「性別」「職業」「学歴」などは、平均を計算するなどといった数値的な比較や検討は基本的に無意味となるが、数値で得られる量的データとして統計処理を行うのが一般的。たとえば「性別」であれば「男」「女」を直接選択できるようにしたり、「収入」であれば「[1]500万円以下 [2]1,000万円以下 [3]1,500万円以下」などのように、その順序に応じて数値を当てはめる。
質問をつくるときのワーディングの問題
調査項目のひとつひとつを、質問文とその回答の選択肢の形にしていくことをワーディング(wording)という。特定の回答を引き出すような質問文の設定は避けなければいけない。
- 曖昧な表現・難しい用語
「あなたは」というような主語や目的語は、くどいようでも省略しないようにする。また、難しい漢語・外来語も使わない。回答者にとって曖昧な表現や難しい用語があれば、よくわからないままいい加減な回答をしてしまうことになる。たとえば「ときどき」「しばしば」「たびたび」などは時間的な曖昧さがあり、「○○周辺」「○○方面」「ここ」などは範囲が曖昧。期間や範囲、単位などは特定するようにする。 - ステレオタイプ
言葉にはあらかじめ固定化されたイメージがある。たとえば「規制化」や「リストラ」といえばマイナスのニュアンスだけど、「自由化」や「キャリアアップ」といえばプラスのニュアンスを持つ。調査で意図的にこのような言葉を用いれば、結果を有利な方向に導くことになりかねない。 - ダブル・バーレン質問
1つの質問文に複数の回答対象があって、どちらの質問について回答したらよいか困るものをダブル・バーレン質問という。たとえば「刺繍や編み物は、男性よりも女性に向いている」という質問は、「刺繍は、男性よりも女性に向いている」と「編み物は、男性よりも女性に向いている」というダブル・バーレン質問となる。 - パーソナル質問とインパーソナル質問
回答者自身に関わる行動や意見を求めるのがパーソナル(personal)質問で、漠然と世の中一般の客観的な行動や意見を求めるのがインパーソナル(impersonal)質問。たとえば「あなたはリサイクル活動をしたいと思いますか」はパーソナル質問で、「あなたは環境保護のためにリサイクル活動は必要だと思いますか」というのがインパーソナル質問。 - キャリー・オーバー効果
質問に対する回答は、その質問の前にどのような質問をしたかによって影響を受けることがある。たとえば、前述のリサイクル活動の質問では、インパーソナル質問をした後にパーソナル質問をすると、後の質問だけをした場合に比べて、全問の影響を受けて肯定的な回答が多くなることが考えられる。このような回答に対する影響や誘導をキャリー・オーバー効果という。重要なのは、キャリー・オーバー効果を排除することではなく、質問文の順序を適切にすること。 - バイアス効果
バイアス(bias)質問は誘導質問ともいい、質問の回答を意図する方向に誘導すること。たとえば「男女の機会均等が叫ばれていますが、あなたは男性も育児に参加すべきだと思いますか」と質問すると、回答者は機会均等の趣旨から考えて肯定的な回答をすることが予想される。
フェイスシートをつくる
アンケート用紙には、質問項目以外に回答者に関する事項を記述する部分が必要で、フェイスシート(face sheet:FS)という。回答者の性別、年齢、職業、家族構成、住居形態などの個人属性を記入できるようにする。プライバシーに関わる内容なので、必要以上に立ち入らず、調査テーマにあわせて過不足のないように気をつける。調査のはじめにプライバシーについて聞くと、調査自体を拒否されることになりかねないので、意図的に最後に置くことが多い。
郵送調査のポイント
アンケート用紙を発送し、回答を返送してもらう。料金は、料金別納や大口・法人向け料金計算、宅配業者のメール便など、送料を考慮して選択する。回収率が思わしくないときは、回答期限を過ぎた対象者に対しての督促を考える。また、回収率を上げる方法としては、アンケートに答えやすくする、謝礼の同封、締切日近くの調査協力のお礼を兼ねた回答返送の催促などがある。一般的に、対象者が回答を記入するのは土日が多いと考えられるので、アンケート用紙の発送から締切日までに土日を2回程度含めるようにする。
回収率を高めるにはどうするか
回収率
回収率(%)=回収数÷調査依頼数×100
回収不能の理由
- 調査対象者リストの不備
転移、死亡、誤記など - 調査対象者の事情
出張、入院、旅行などの長期滞在、調査拒否など - 災害・事故
台風、火災などの災害や交通機関の事故などによる調査不能
回収率の向上
- 丁寧で信頼を得るあさいつ状
調査の趣旨や意義、対象者を選んだ方法、個人情報保護の確約などを丁寧に記述し、理解してもらい、信頼を得られるようにする。 - 謝礼を準備
回収後の渡すよりも、アンケートを依頼するときに渡した方が回収率が高まる。郵送調査では、回答を返送してくれたときに一律に100円程度の品を送るよりも、抽選で1万円の旅行券を送るようにするほうが回収率が高まる。以前は筆記用具やタオルなどが多かったが、現在ではプリペイドカードのようなものが多い。 - 督促状を出す
回答が未着の対象者に対して、調査への協力のお礼を含めた督促状を発送する。主な内容は以下のようなもの。
- 調査の協力のお礼
- アンケート用紙到着の有無の確認
- アンケート用紙返送のお願いと返送期限
- 調査の趣旨の説明と調査への協力依頼
- 発送年月日、調査主体の名称、住所、連絡先、担当者