もくじ
「セレクトショップを立ち上げる―開業から運営までのQ&A」を元に、要約メモしておきたいと思います。
事業計画書
一般的なセレクトショップの、事業計画書の主な内容は以下。
- 企業理念
どういう考え方に基づいたショップか - 市場環境分析
市場の現状に対するビジネスチャンスの根拠 - ターゲットとする市場の選定
対象とする顧客や市場における自店のポジショニング - 競争優位性
競合先に比べて自店の優れたマーケティング戦略 - 予測される問題点
新たなやり方にともなう問題点とその解決法 - 経営計画
販売計画、仕入れ計画、スタッフ構成計画など - 資金計画
開業資金、運転資金に対する自己資金および資金調達方法 - 損益・収支計画
収支計画と資金繰り計画
市場のセグメント
通常の市場細分化では、地域、年齢、職業、所得、学歴などのデモグラフィック要因と、ライフスタイル志向、価値観、パーソナリティーなどのサイコグラフィック要因から属性分類がなされるが、より複雑な要素をはらむファッションビジネスでは、これらに加えて独自の分類基準が採用される。
- マインドエイジ分類
百貨店などに見られるような、フロアごとの年齢設定に用いられる。実際の年齢よりもイメージ年齢。 - グレード分類
商品の質も含めた価格帯を表す。プレステージ(最高級)、ベター(上等)、モデレート(中位)、ボリューム(買いやすい)、バジェット(値頃)など。 - オケージョン分類
顧客の生活を on-duty(勤務中)と off-duty(プライベート)に二分したり、ソーシャル、オフィシャル、プライベートに分けたりして、自店が展開するファッションが、どの場面で装着されるかといった分類に用いられる。
ターゲットプロファイリング
以上のような切り口から分類を行い設定する必要があるが、大事なのはそれぞれを統合してひとつのイメージを構築すること。そのための方法としてターゲットプロファイリングがある。これは、自店のイメージターゲットを設定し、その暮らしぶりを生き生きと詳細に描くという手法。基本的な属性に加えて、ライフスタイル志向、行動特性、趣味嗜好にいたるまで、より具体的に掘り下げていく。
これにより、ショップでの整合性の高いライフスタイル提案が可能になると共に、顧客自身も意識していない潜在ニーズの発見にもつながる。
オリジナルの感性
セレクトショップは、自ら設定した独自のファッション感覚やテーマに基づき、ブランドショップにはない個性的な魅力を創出しようというもの。
エスニック-モダン、カントリー-ソフィスティケート、フェミニン-マニッシュ、アクティブ-エレガントなど。
隠れ家のようなお店
買い上げ単価を上げる方法としては、単価の高い商品を展開する、フルコーディネートで販売するなどが考えられるが、そのためにはそれなりの雰囲気の店舗空間を創出し、ステイタス性の高いブランドや付加価値のある商品を揃える必要がある。
セレクトショップのIT化
特にセレクトショップの場合は、顧客サービスの領域でのIT化には注意を要する。顧客に対して親身な対応を行うスタッフほど、人と人の間にITが割っては入ることを好ましく思わない傾向がある。
オープンまでのMD
- MDコンセプト策定
商品に関する明確な方針を決める - 計数計画作成
最低でも開店以降3ヶ月分の売り上げ、仕入れ、在庫、粗利益などに関する予算を組む - スタイリング設定
ショップの代表的なスタイリングイメージを2〜3体ほど設定する - 商品調達バランスの設定
仕入れ商品、別注商品、オリジナル商品の比率を決める - アイテムバランスの構成
売場のゾーニングを基に各アイテムのバランスを構成する - 仕入れ先編成
必要な商品を考慮して仕入れ先ブランドを構成する - バイイング活動
仕入れ先に出向き取引を打診する
カッコイイ商品とベーシックな商品
売り場の商品構成のボリュームを三角形でイメージし、訴求バランスをコントロールすることで、ビジネスの安定を図る。
- 提案商品
旬なもの、お店のメッセージを主張するもの、思わず「あのショップに入ってみたい」と思わせるようなメインディスプレーに飾る、テーマ性をもったスタイリング表現。
【顧客】新しい発見がある - 主力商品
とくに実売期では、季節にジャストミートするアイテムやウェアリングを設定し、売り場のメインで、ある程度のボリューム感を持って展開する。なんとなく来店した顧客に「今はこれを買うべきなんだ」と思ってもらうことが目的。
【顧客】いろいろあって楽しい - 普及商品
顧客は、ショップのメッセージ商品に感動する一方、「あのショップに行けば、いつでもあれがある」といったニューベーシックアイテムもしっかりインプットしている。良質のTシャツやソックスなど。
【顧客】欲しいものが必ずある
セレクトショップでの季節対応
- 1月(正月)
春物導入期、冬物切上期 - 2月(バレンタイン)
春物実売期、春物切上期 - 3月(入学)
春物実売期、初夏物導入期 - 4月(フレッシャーズ)
初夏物実売期、春物切上期 - 5月(ゴールデンウイーク)
初夏物実売期、盛夏物導入期 - 6月(ブライダルゲスト、梅雨)
盛夏物実売期、初夏物切上期 - 7月(リゾート)
初夏物切上期、晩夏物秋物導入期 - 8月(トラベル)
晩夏初秋物実売期、秋物導入期 - 9月(ビジネス)
秋物実売期、晩夏初秋物切上売期 - 10月(スポーツ、ハロウィン)
秋物実売期、冬物導入期 - 11月(防寒)
冬物実売期、秋物切上期 - 12月(クリスマス、ギフト)
冬物実売期、梅春物導入期
バイイング計数
例)上代¥10,000のカットソー
- 掛率60%、下代¥6,000、売上原価¥6,000
- 値入率40%、値入高¥4,000、粗利益¥3,000
- ロス¥1,000、実現売上高¥9,000
販売促進活動
集客促進
- メディア掲載
- 看板、サイン
- イベント
- セール
- DM、電話、メール
- ショッピングバッグ
- ショップカード
- Webサイト
買上促進
- 接客サービス
- 空間演出
- BGM
- 香り
- POP
- タグ、ラベル
- ノベルティ、プレミアム
- メンバーズカード
セール
売上低迷 → セール乱発・早期化 → 適品不足 → 売上低迷
のような、販促=セールといった考えがMD計画を狂わせる。これを放置すれば、ますますプロパー購入に対する意識は減退する。待っていれば安くなるものを買い続けるほど顧客はお人好しではない。しかも低価格のインパクトはすぐに慣れてしまい、その要求はエスカレートし続ける。
セレクトショップでは、自分が良いと思った商品をどこまで信じ続けることができるかが生命線となる。苦労して見つけてきた物を簡単に叩き売ってしまうようなら、コンセプト自体を見直すべき。
イベント
成熟化した市場において「売る気」を前面に押し出すと、顧客は引く。モノよりもコトを提供する必要がある。
- シーズン前のフェア
特にハイエンドのブランドやアイテムの場合は、選考予約会の開催が有効 - フロアショー
売り場スペースを利用してのフロアショー。顧客にモデルを依頼するという方法もある - パーティー
ハロウィンやクリスマスなどの機会をとらえ、パーティーを開催する。欧米などに比べておしゃれをしていく場がなく、需要の創造につながる。
VMD
売り場を「見せ場」と「売る場」に分けて行う。見せ場は商品をいかに魅力的に演出するかが問われる。売る場は顧客にとっての分かりやすさ、選びやすさといった観点から商品を陳列する。
コンシェルジュのようなサービス
直接的に「モノを売る」というよりも、顧客の抱える問題を最適な解決方法でサポートする。自店にはないものであれば、他店の商品であってもファッション情報として顧客に紹介する。
ショップの一日の流れ
- 開店前
ディスプレーは1週間ごとに変えることが基本だが、その日の天候や気温などを考慮して、こまめな手直しを行う。 - 開店中
常に売り場の空気が沈まないように、乱れたディスプレーの手直しや商品の再ゾーニングなどの作業を行う。 - 閉店後
売り場の整理整頓やコミュニケーションは簡潔に。
営業期
- 梅春期
そこまで来ている暖かいイメージに心がときめき、しかし実際に春物を着るにはまだ寒い時期。春を感じさせる要素を持った冬素材の商品や、コートインにコーディネートするアイテムなど。展開時期が短いために、リスクをともなう側面もある。 - 春物
入学・卒業、就職など、何かと改まることの多い季節。スーツやワンピースなどを主体としたエレガンスラインが主体となる。この時期は気温が中途半端なので、気温差に対応できるアイテムを加えたトータルコーディネートが必要。 - 初夏期
ゴールデンウイークがメインとなる。春期から一転して開放的な気分になり、スポーティーでアクティブなカジュアルマインドへの志向が見られる。Tシャツやパーカなどのカットソーや、半袖への切り替えが行われるのもこの時期。 - 盛夏期
ゴールデンウイークが終わり、再びキャンパスやオフィスに戻り、世の中もやや落ち着いた雰囲気になる。やがて気温の上昇とともに、肌を露出したデザインや大胆な色柄使いの本格的なリゾートファッションの季節を迎える。同時に梅雨もあるため、レイニーファッションの展開も考慮する必要がある。 - 晩夏・初秋期
夏物のセール後、早めに秋物を提案したいショップの意向に反して、この時季は残暑がかなりしつこく続く。本格的な秋を前に、夏物にダークなオータムカラーを配したり、肉厚ではない素材による秋物提案など。 - 秋期
肌に涼しい風を感じると、ウールの暖かさが求められ、重ね着が増えてくる。ジャケットやニットを中心に秋物の実売期となる。 - 冬期
冬のキーアイテムはコート。ショップにとってはクリスマスも重要な訴求ポイント。
海外リサーチ
- アメリカ
大規模なショッピングセンターや、スケールの大きいSPAなど。ニューヨークの新興エリアのエッジの利いたセレクトショップやライフスタイルショップ、ロスの古着屋やストリート系など。 - ヨーロッパ
パリ、ミラノ、ロンドン、バルセロナなど、ヨーロッパのファッションには、新しいものを取り入れる柔軟性と、歴史や伝統を頑固なまでに守るバランスの妙が感じられる。 - アジア
中国、韓国、台湾、タイやベトナムなど。香港市場にはグローバルブランドが一堂に介する。
顧客の満足
- リピーター化する
何も買わなくても気分良く退店していただくことが大事。顧客は買いたくなったらそのことを思い出して必ず戻ってくる。 - クチコミ
顧客は、満足した購入体験なら必ず周りの家族や友人に話してくれる。 - ストアロイヤルティーの確率
顧客満足経営を持続していると、顧客の店に対する信頼(=ストアロイヤルティー)が育まれてくる。
CS と ES
CS(Customer Satisfaction)=顧客満足
ES(Employee Satisfaction)=従業員満足
「企業にとって最も重要となるのは顧客満足の獲得。しかし、その顧客と直接触れ合うスタッフが自身の職場に満足できていなければ、プライドを持ってサービスにあたることは不可能」といった考え方が強まっている。