今年は、最小にして十分な筋肉を目指して、よりトレーニングを充実させていきたいと思っています。身体が故障してしまったり、なんとなく筋肉が肥大することがないように、自分の身体を制御すること。「筋持久力:7、筋力:2、筋肥大:1」のバランスです。

スポーツ栄養学に関していくつかの知見をあたっている所ですが、共通するのは、常に今後の研究結果次第では異なる結論が得られる可能性もあるということ。オーガニックだから安心とか、昔から食べられているものだから大丈夫だという概念を捨てて、自分にあった食生活やトレーニングを検証しながら理解を深めていきたいです。

食事の取り方やタイミングはとても大切な要素。いま知りたかった情報がうまくまとめられている良い本でした。

スポーツ栄養学: 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる」の要約メモです。

スポーツ栄養学とは

食事がパフォーマンスの向上や健康の維持・増進においてなぜ重要なのかを改めて考えてみる。テレビCMで耳にする「あなたは、あなたが食べたものからできている」というものがある。これはもともとブリア・アヴァランが「美味礼讃」という著書の中の「どんなものを食べているか言ってみたまえ、君がどんな人であるか言いあててみせよう」という一節からできている。

脂肪組織1kgは約7,200kcalに相当する。単純計算すると1日たった20kcal多く摂取するだけで、1年後には脂肪が1kg着いてしまうことになる。食事の効果は良くも悪くもしばらくたった後に訪れる。

世の中すべての人に当てはまる理論などありえず、体調、健康状態、トレーニング状態、年齢、性別、体質、遺伝など様々な要因によって必要なものが変わる。

スポーツ栄養学を理解するためには、運動時にどのようなことが体内で起きているのかの知識と、食事をとったときにどのように消化吸収・代謝されるのかという基礎栄養学に関する知識が必要となる。それらの知識を統合しながら、何をどれだけどのタイミングで摂取したほうがよいのかに関しての理解を深めていくこと。

欧米人を対象として得られた知見が、そのまま日本人に対しても当てはまるとは限らない。日本人にあった食事・栄養素等の摂取法は、やはり日本人が中心となって研究していく必要がある。

身体組織と体脂肪・脂肪細胞の種類

男性ではBMIが23.0〜24.9、女性は19.0〜24.9の範囲でもっとも死亡率が低くなっている。それ以上でも以下でも死亡リスクが高まる。

体重やBMIが同じ人でも、身体の中身は大きく異なってくる。体脂肪と、それ以外の骨格筋、肝臓、脳、心臓、肝臓など。

エネルギーの貯蔵庫としてはたらく白色脂肪細胞、エネルギー消費を高めることで体脂肪を減らす働きをもっている褐色脂肪細胞、それ以外にも、近年第3の脂肪細胞、ベージュ脂肪細胞の存在が明らかになりつつある。これは、全身のエネルギー消費量が増加し、脂肪をたくさん含んだ食事をとっても肥満になりにくいことが報告されている。

エネルギー消費量と摂取量

脂肪は1gあたり9kcalのエネルギー量を持つ。糖質とたんぱく質は1gあたり4kcal。そのため、脂肪組織1kgには7,200kcalのエネルギー量が蓄えられていることになる。それをすべて消費するには約16時間のランニングが必要。1年間365日かけて落とそうと思えば、1日3分のランニングという計算になる。

1日のエネルギー消費量は大きく分けて3つ。

  • 基礎代謝量
    人が覚醒状態にあるときに、生命活動を維持するのに必要な最小限のエネルギー。
  • 食事誘発性熱産生
    食事をとったあとに、一時的にエネルギー消費量が高まったときのもの。
  • 運動時代謝量
    運動や生活活動で体を動かしたときのエネルギー消費量。

骨格筋量を1kg増やしたとしても、それによって増える基礎代謝量は理論上1日13kcal程度。

たんぱく質を摂取した際の食事誘発性熱産生がもっとも高くなる。たんぱく質が他の栄養素に比べて複雑な構造をしており、消化吸収に大きなエネルギーを使うため。

美味しいもの食べるとドーパミンが放出され、快感が得られるようになる。しかしこの刺激を受け続けているとドーパミン受容体が減少して、よりたくさん美味しいものを食べなくてはならなくなる。

糖質

グリコーゲンとは、グルコースが連結された状態のもの。グリコーゲンがエネルギー源として利用される場合には、グルコースへと再度分解される。1つの大きな分子になることで、肝臓や骨格筋の細胞内の浸透圧を下げ、より多くの糖質を細胞内に貯蔵できるようにするため。

マラソンのように1時間を超える運動では、その後半になると突如としてペースが落ちることがある。これは、特に骨格筋のグリコーゲンが減少・枯渇していることが関与していると考えられている。

運動誘発性低血糖を防ぐために、運動開始直前(30〜45分前)には糖質摂取を控えるべき。1〜1時間半前に糖質を摂取することで、血糖値や血中インスリン濃度の上昇が落ち着いてから運動を開始できるようになる。

グルコース(ブドウ糖)はそのままの形で消化吸収されるので、血糖値が上昇しやすくインスリン分泌も高くなる。GI値(グリセミックインデックス)は、グルコースを100として血糖値の上昇度を示した指標。GI値が低い糖質を運動前に摂取すれば、運動誘発性低血糖が生じにくくなる。

筋グリコーゲンが減少した状態でトレーニングを行えば、骨格筋のたんぱく質が分解されアミノ酸がエネルギーとして利用されてしまう。

糖質(0.8g/体重kg/時)に加えて、たんぱく質(0.4g/体重kg/時)を摂取することで、糖質(1.2/体重kg/時)を摂取したのと同じくらい筋グリコーゲンが回復する。

トレーニング後にグリコーゲンを回復させるのに十分な時間がある場合は、運動後それほど急いで糖質を摂取する必要はない。

持久力トレーニングとして、Sleep-Low法がある。これは、まずきちんと食事をとり、筋グリコーゲン濃度が高い状態で強度の高いトレーニングを行う。その後の食事(夕食)では糖質を摂取せずに筋グリコーゲン濃度が低い状態を作り出し、その状態で睡眠をとることで高強度トレーニング後の遺伝子発現を促す。翌朝、筋グリコーゲン濃度が低い状態で低強度の持久力トレーニングを行うことで、ミトコンドリアやGLUT-4遺伝子発現をさらに活性化させる。その後、糖質を十分に摂取してグリコーゲンの回復を図り、午後の高強度トレーニングに備えるという流れ。研究では1週間でも効果が得られることが報告されている。

糖質制限食は脂肪リスクが高くなるという解析結果も示されている。検証は今度も引き続き行われるべきだが、現段階では避けるべき。

たんぱく質

たんぱく質は、消化酵素により分解されてから最終的にアミノ酸やアペプチドとして小腸から吸収される。

コラーゲンやゼラチンはそれ自体複雑な構造をしている分子で、そのまま摂取してもほとんど吸収されない。

筋力トレーニングを行った場合、すぐに筋線維が肥大したり筋線維数が増えるということはなく、少なくとも1〜3ヶ月間のトレーニングが必要。

トレーニングを行なっている人のたんぱく質の摂取量は、測定誤差や個人差などを考慮して、1.76g/体重kg/日と少し高めの値が推奨されている。

必須アミノ酸の中でも分岐鎖アミノ酸と呼ばれるBCAAが注目されている。ロイシン、バリン、イソロイシンがこれにあたる。BCAAは主に筋肉で代謝され利用される。

たんぱく質を一度に大量に摂取するのではなく、筋たんぱく質の合成を増加させるといわれる20gを保ちながら、1日の中で複数に分けて摂取するのが良い。

エネルギー摂取量を毎日30%程度減らすことで寿命が延びるという知見もある。その中でも、たんぱく質、特にBCAAの摂取を抑えた方が、糖代謝機能を改善するうえでは効果的であるという可能性もある。

脂質

飽和脂肪酸の摂取はLDLコレステロールの血中濃度を増加させ、心疾患の発症リスクを高めるという説が広く受け入れられている。LDLは抹消へのコレステロール運搬を行うのに対して、HDL(超程比重リポたんぱく質)は末梢組織から肝臓へのコレステロール運搬を行うため、LDLは悪玉コレステロール、HDLは善玉コレステロールと言われている。

魚の摂取量が少ないアメリカでは、魚油を多く含む魚の摂取量を増やすことで、心疾患のリスクを低下することが認められている。魚の摂取雨量が比較的多い日本でも、魚の接収量を増やすことでさらなる効果が期待できる研究結果がある。この効果はn-3系脂肪酸によるものであると考えられている。

魚油の摂取によって血中の中性脂肪が減少すると考えられている。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸など、ある特定の脂肪酸の機能や効果に注目しすぎることなく、バランスよく接収するべきというのが著者の見解。

最近では、糖質の摂取量を1日のエネルギー摂取量の5%未満もしくは1日20g未満までに減少された低糖質・高脂肪食「ケトン食」が注目を浴びている。糖質の摂取量をほとんど無くしてしまうことで、体内での脂質の利用量が増加する。特に肝臓で、脂肪酸の利用増加にともないケトン体と呼ばれる物質が多量に生成される。効率の良いエネルギー基質であるケトン体の生成を促すケトン食の長期摂取により、運動中の脂質酸化量が増大する。ケトン食やケトン体モノエステルは、今後さらなるエビデンスの蓄積が求められる分野。

運動中の水分摂取量とスポーツドリンクの効果

人は1日約2,500mlの水を摂取し、それと同じ量の水分を排出している。飲料と食物中の水分からそれぞれ約1,200ml、1,000ml摂取し、残りは代謝水から得ている。代謝水とは、体内で糖質や脂質を酸素と反応させたときに発生する水。排水量の大部分が尿や汗だが、息を吐くときにも水蒸気が排出されている。

たとえば体重70kgの人がランニング(7METs 、毎分1,700mlの酸素摂取量=毎分8.5kcalのエネルギーを消費)を1時間行なった場合、体内で発生した熱がまったく発散されずにこもってしまったとしたら、体温が43℃程度まで上昇して死に至る。そのために必要なのが発汗作用。

水は常温から体温付近の温度で気化すると、100gあたり約58kcalの熱を奪う。体重70kgの人の熱容量は約60kcal/℃あるので、100gの汗が蒸発するごとに体温が1℃低下することになる。汗が流れ落ちてしまった場合には、このような体温低下の効果は得られない。

脱水が進むにつれてパフォーマンスが低下する。およそ体重の2%の脱水でパフォーマンスが明らかに低下する。

発汗量と同じだけ水分を摂取することで、血液量の減少および心臓への負担増大を予防でき、体温の上昇も抑えることができる。

汗を掻くことで体内の塩分量が減少しているため、水をそれだけとると、血中の浸透圧は運動前に比べて低下してしまう。塩分、特にナトリウムの濃度が低下しすぎると吐き気や頭痛、さらには深刻な障害を引き起こすことがあるため、身体は浸透圧が戻ったところで水を飲むのをやめるように指令が働く。つまり、体内の塩分量が減少したままの状態で水だけ飲むと、少ない飲水量でも浸透圧が回復してしまい、喉が乾いたという気持ちが薄らぐ。大量に水だけを摂取したとしても、尿量を増やすことで水分を体外に排出し、浸透圧を元に戻そうという作用が働く。その結果、脱水症状は一向に回復しないことになる。そうならないために、塩分を一緒に補給する必要がある。

摂取する食塩濃度は0.1〜0.2%、ナトリウム濃度にすると100mlあたり40〜80mg程度となる。市販のスポーツドリンクも40〜50mg程度のナトリウムが配合されているものが多い。

体液の浸透圧は、細胞外液の浸透圧が異常に高くなると、細胞から水が引き出されて細胞が縮む。逆に低くなると、細胞に水が流入して細胞が膨らむ。これらはいずれも細胞の機能障害を引き起こす要因となる。特に脳の神経細胞は浸透圧の変化にとても敏感。

アイソトニックは体液と同じ浸透圧で、ハイポトニックは体液よりも浸透圧が低いスポーツドリンクを指す。粉末状のスポーツドリンクを使用する場合は、推奨されている水の量で作る方が効果は高い。

パフォーマンス・健康とサプリメント

エルゴジェニックエイドは、パフォーマンスの向上を期待して摂取するサプリメント。クレチアンやカフェイン、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)など。普段の食事に気をつけた上で、少しのパフォーマンスアップを期待して摂取するというのがエルゴジェニックエイドを使用する上での正しい姿勢。

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