行動を変えるデザイン ――心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する」を要約メモ。

第1章 心は次にやることをどうやって決めているのか

だいたいいつも次に何をするかについて、人は意識的に決めていない。

人はしばしば習慣に基づいて行動している。習慣は作ることができるが、やめるのは難しい。

人は過去の経験に基づいて直感的な即座の決断をすることがある。

意識的に考えているときも、人はなるべく手を抜こうとしている。より簡単な類似の問題にすり替えることで大まかな答えを出してやり過ごしている。

人は、他の人、特に仲間や専門家を参考にしながら、何をした方がいいか考えている。

当たり前のことがやはり大事。簡単で、慣れ親しんでいて、報酬があり、見た目がよく、緊急性があり、実際に実行できるようする。

第2章 なぜ他でもないその行動をするのか

行動するためには、あらかじめ5つのことが直前に生じていないといけない。

  1. 行動を考え始めるきっかけとなるキューに反応すること
  2. 直感的な心理が、行動についての思いつきに自動で反応すること
  3. 意識的な心理が、思いつきについて、特に費用対効果の観点から評価すること
  4. 行動するアビリティがあること、つまり、何をするのかをわかっているか、必要なものが揃っているか、そして、成功できそうかを確認すること
  5. いま行動するべきタイミングなのか、特に急ぎなのかを決めること

もし行動に意識的な心理(システム2)が必要なら、5つのステップすべてを通過しないといけない。もし行動が識的な心理を必要としないなら(システム1だけでいいなら)、意識的な評価とタイミングの確認をショートカットできる。

第3章 行動を変える戦略

できるかぎりユーザーの作業をなくせる技術的な解決策を探す。行動そのものを変えるよりも、技術的な解決策を設計する方がはるかに効果的なことが多い。

技術的な解決策には、「舞台裏で行動を自動する」「うまくデフォルト化する」「ユーザーがすでにやっていることのついでに行動が生じるようにする」の3つがある。

習慣は繰り返している行動を定着させる非常に強力な方法。習慣には明快なキュー、変わらないルーティン、そして、価値ある報酬をすぐにもらえることが必要。

すでにある習慣をやめるのはできる限り避ける。その代わりに新しい習慣をつくった方がいい。

もし習慣をやめることが不可欠なら、キューを避ける、ルーティンを置き換える、習慣を追いやる、もしくはマインドフルネスでトリガーとルーティンへ意識を向けるようにする。

どんな場合でも、自発的に行動を変えるためには意識的な選択が必要。ここでの戦略は、すべてユーザーに求められる選択や作業を単純化しているに過ぎない。

第4章 何を達成したいかを明らかにする

プロダクトが達成すべき現実世界の成果を定義する。心理状態を目標に置くのは避け、プロダクトの成否を判断できる測定可能な成果にフォーカスする。

自社固有の目標(例えば利益向上)を、ユーザーが本当に関心を持つ現実世界の成果に翻訳する。

プロダクトの目指す成果実現のために人々がとりうる行動についてブレストして洗い出す。

それぞれの行動を実用可能な最小限のアクション(MVA)にまで削ぎ落とす。

【成果物】明確に定義された成果と、想定しうるアクターおよび彼らがとりうる行動の一覧

第5章 適切なターゲットアクションを選択する

ユーザーの特性を研究して明文化する。特に、行動にまつわる過去の経験、プロダクトにまつわる過去の経験、行動を起こすための現在の動機、企業との関係(信頼)、および行動に対する障壁などについてまとめる。

行動ペルソナを作成する。プロダクトによって行動を変えようという試みに対して、異なる反応をすると考えられるグループごとにつくる。

(第4章で作成した)ユーザーがとりうる行動の一覧のひとつひとつについて、ユーザーにとっての有効性、コスト、動機、実現可能性の観点から評価をする。

これらの基準に基づいて、理想的なターゲットアクションを選択する。

【成果物】ユーザーについての詳細な観察結果。アプリケーションのユーザー(または潜在ユーザー)の主なグループと、その特性を示す一連のユーザーペルソナ。ターゲットアウトカム、アクター、行動についての明確な記述。

第6章 行動を構造化する

ターゲットアクションを、ユーザーが完遂する必要がある個別のステップに分解する。

  • シンプルで明快。
  • 成し遂げやすい(やさしそうに見え、かつ実際に実行しやすい)。
  • 小さい(1つのステップごとに、はっきりと進捗状況がわかるようにする)。
  • 有意義で、終わった後に達成感が得られる。
  • 完了したことが即わかる(試みた後すぐに、はっきりとうまくいったのかどうかがわかる)。

【成果物】ビヘイビアプラン(ユーザー行動の具体的な一連のステップ)

第7章 環境を構築する

ユーザーが行動する意欲を持っていること、そして動機が表面化していることを確かめる。そして、ユーザー自身にすでにある動機を強調する、そうでなければ、お金、承認、社会的地位、その他の要素で動機づける。

今すぐ行動を起こさせるキューがあることを確かめる。その簡単な方法は、ユーザーに行動するよう頼むこと。

ユーザーが自分の成功や失敗を認識できるようにする。そして対応可能なフィードバックをする。

ユーザーの注意を引いている他の行動をさせないようにするか、逆にそれを活用する。ユーザーがすでにやっていることに便乗できるのが理想。

【成果物】意思決定のための環境を記述した、より洗練された詳細なビヘイビアプラン。ビヘイビアプランとは別の、プロダクトの機能の見せ方についてのアイデア一覧。

第8章 ユーザー自身を準備する

ユーザーが、自分は自発的に行動できる人だと思えるようにする。

ユーザーがすでに慣れ親しんで楽しんでいることと、新しい行動との間に強い関連性を構築できるようにする。

ユーザーが何をする必要があるかを明確に指示し、行動に不可欠な情報はすべて提供する。

【成果物】ユーザーが何もしない状態から行動する状態に移行する方法や、プロダクトがどのようにユーザー自身を準備するか、を含めて更新したビヘイビアプラン。

第9章 コンセプトデザインからインターフェースデザインへ

ビヘイビアプランをプロダクト検討の素材に落とし込む。アジャイル開発の分野ではユーザーストーリーにしていく。シーケンシャル開発の分野では要求仕様の概要部分を作っていく。

まずは、ビヘイビアプランにインターフェースデザインが引っ張られすぎないようにする。プロダクトがどう振る舞うのかではなく、何をすべきなのかに注力する。

チームが魔法を使える、つまりプロダクトになくてはならない体験を発想できるようにする。

トラッカーやリマインダーといった、ユーザーが慣れ親しんだ行動変容デザインパターンを活用する。

ワイヤーフレームやモックアップを作る。

【成果物】ユーザー体験の備わったワイヤーフレーム。

第10章 インターフェースデザインを見直す

5つの前提条件、キュー、反応、評価、アビリティ、タイミングの観点から、インターフェースデザインを見直す。

行動科学研究を応用した行動戦術をそれぞれの前提条件に活用する。

大きなギャップが見つかったら、第6~8章まででやった、行動、環境、ユーザーを順番に見直す。

【成果物】見直されたワイヤーフレームやモック。

第11章 デザインからコードへ

ユーザーの目の前にデザインを差し出す。動くプロトタイプの方がいいが、グラフィックデザインでも検証できる。

プロトタイプをいじるユーザーの行動を観察する。そして、彼らの言うことにはあまり惑わされないように。

プロダクトの構築フェーズでは、行動と実装のトレードオフを判断する。

【成果物】プロダクトが完成!

第12章 効果を測定する

プロダクトのターゲットアウトカムとターゲットアクションを測定できる2つの指標を決める。

もし、成果と行動がアプリケーション内のものなら直接測定すればいい。もしそうではないのなら、アプリ以外からなんとかしてデータを得るか、アプリケーションにその方法を仕込めないか考える。

そのどちらもが望めないなら、プロダクトでの行動がどのように成果や行動に影響を与えるかわかるモデル、つまりデータブリッジが必要。

効果自体を測定する。鉄板のやり方はA/Bテスト。出来合いのツールで測定できる。

【成果物】明確なプロダクトの効果測定結果!

第13章 行動の障害を見つける

ユーザーがどこでつまずいているのか、特に行動が変わるまでの道のりでどんな障害に直面しているのかを知るために、実際のユーザーがどのようにプロダクトを使っているのか調べる。

アプリケーションのデータを見て、ターゲットアクションへと向かうプロセスのステップごとに、ユーザーが水漏れしているところを見つけ出す。

機能として問題のあるところは単に取り除く。そうすれば障害物を避けられる。もしくはCREATEアクションファネルを用いて、それぞれの障害に何が起きているのか診断する。

デザインと開発に力をつぎ込んでしまう前に、小さくすばやい検証で、とりうる解決策を評価する。

【成果物】アプリケーションの課題一覧、課題一覧、課題ごとの重要度、解決案のスケッチ。

第14章 プロダクトを学び、改善する

行動を改善するための変更案と、営業、マーケティング、その他部門から提案されたプロダクトの変更案すべてを1箇所に集める。

事業とユーザーのニーズ、それに行動に対する想定効果に基づいて、変更案に優先順位をつける。

第12章と同じツールを用いて、プロダクトの主要な変更による効果を測定する。継続的な測定を組織文化の一部にする。

すでにプロダクトが存在する場合、探索の段階から始めて、デザインの段階は飛ばし、どこに改善が必要かを探索するためデータを精査する。

【成果物】改善された新プロダクト!

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