もくじ
目次――Anonymousと違法ダウンロード刑罰化
- Anonymous(アノニマス)ってなに?
- AnonOpsってなに?
- 違法ダウンロード刑罰化でどうなるの?
- 違法ダウンロード法案の存在に隠れていたACTAってなに?
- そしてOpJapanへ
- 有料コンテンツ普及への道
Anonymous(アノニマス)ってなに?
いま Anonymous によるサイバーテロやデモが行われています。
ハッカー集団「Anonymous」が6月25日、日本政府と日本レコード協会に対し“宣戦布告”ともとれる宣言をサイト上に公開した。違法ダウンロードに対し刑事罰を盛り込む改正著作権法の成立に抗議する内容で、“公式”Twitterアカウントが「始まりだ」とツイートした財務省管轄サイトは現在、ダウンしてアクセスできない。
Anonymousが日本政府とレコード協会に“宣戦布告” 違法ダウンロード刑事罰化に抗議 – ITmedia ニュース
ネットの NEWS では「ハッカー集団 Anonymous」と書かれることが多いですが、まずはその実体を紐解いていきましょう。
Anonymous とは「匿名の」という意味で、2ch でいう「名無しさん」のようなものですね。Anonymous は思想や概念である Internet Meme(インターネット・ミーム)の集まりであり、それに賛同する人たちのコミュニティを指します。
そのコミュニティにリーダーはおらず、組織構造を持ちません。構成員は弁護士、親、IT専門家、警察職員、大学生、医師、セキュリティ研究者、FBI などの法執行機関の人たちなど、あらゆる職業や年代がいるようです。
中にはハッカー(正確にはクラッカーといいます)もいるでしょう。これは Anonymous が組織として1つの思想を持った集まりではなく、個の集合体であるということです。
今回のサイバーテロも、攻撃しているのはアメリカの Anonymous であり、日本の Anonymous はあくまでも合法的に解決したいと考えている人が多いようです。しかし Anonymous であれば同じこと。他人からみれば、夫婦間で異なる考えを持っていることは理解されず一括りにされてしまうのと同じことですね。
Anonymous のトレードマークは2つあります。1つは映画「V for Vendetta(Vフォー・ヴェンデッタ)」の Guy Fawkes(ガイ・フォークス)の仮面。もう1つは顔のないスーツ姿の紳士。
AnonOpsってなに?
Anonymous がその都度発足させる作戦は「AnonOps(Anonymous Operation)」と呼ばれます。オープンなチャットで意見が交わされており、独裁ではなく民主制を持ったやり方でオペレーションを決めているということです。
一番近い単語としては「tribe」でしょうか。しかし、これも適切とは言い難いですね。コードを書いて、それが受け入れられればマージされ、必要に応じて有志によるメンテナンスが始まるといったオープンソース的な性質も持つ、ヒューマンネットワークともいえるかもしれません。あえてひと言で表現するならば、「Anonymousは世界的な抗議共同体である」となるのかもしません。
本当のAnonymousが知りたいの(1/2) - @IT
活動の目的や動機は実にさまざまですが、「インターネット(あるいはサイバー空間)における自由を守る」という理念は共有しているようです。しかし個々の作戦活動の内容を見ていると、ネットの自由だけでなく、表現の自由、検閲への反対、環境保護、格差是正、人権保護などなど、実にさまざまな主張をしています。まさになんでもアリという感じです。
いまさら聞けないAnonymous(1/3) - @IT
また AnonOpsの活動に参加している人も様々です。その中にはいわゆるハッカー*4と呼ばれる人もいますが、全体から見ると少数だと思われます。多数のサイトへの DDoS攻撃や侵入して情報を漏洩する攻撃などから、メディア等では「ハッカー集団」と見られているのでしょう。DDoS攻撃への参加者は数十人から多いときには数百人にのぼることもありますが、単にツールを実行するだけでも攻撃に参加できるため、必ずしも高いスキルは必要ありません。またサイトへの侵入を行っているのはごく一部のメンバーだと思います。そのため Anonymousを「ハッカー集団」と呼ぶのは、やや狭い捉え方だと言えます。
Anonymousは「ハッカー集団」なのか? – セキュリティは楽しいかね?
違法ダウンロード刑罰化でどうなるの?
事の発端は日本レコード協会が提出した資料のようですね。
私的録音問題への対応について近年のデジタル化・ネットワーク化の進展を背景に、汎用機器等を用いたレコードの複製が大量かつ広範囲に行われているが、かかる状況はWIPO実演・レコード条約第16条(2)で権利制限が許容される「実演又はレコードの通常の利用を妨げず、かつ、実演家又はレコード製作者の正当な利益を不当に害しない特別な場合」を既に超えているものと考えられる。
この問題の根源には、そもそも著作権法第30条第1項が定める私的使用のための複製に係る権利制限の範囲が広すぎるという問題がある。
著作権法第30条第1項が許容している私的複製の範囲が広すぎ、権利者の利益を不当に害するという問題は、平成5年以降、私的録音録画補償金制度によって実質的には軽減されていたが、近年、補償金対象に指定されていない機器及び記録媒体による私的複製が増加してきたことにより、再び深刻になっている。
私的録音・録画補償金制度は、現行著作権法第30条第1項が広く私的複製を許容しているという前提のもとでは必要不可欠であり、有益な制度であるが、抜本的には、著作権法第30条第1項の改正により、零細かつ権利者の利益を不当に害さない私的複製の範囲を明確に限定することを重要な課題として検討すべきと考える。
私的録音問題に関する当協会の考え方
法改正の概要の一部を抜粋です。
インターネット情報の検索サービスを実施するための複製等に係る権利制限
インターネット情報の検索サービスを業として行う者(情報の収集等をプログラムにより自動的に行うことや一定の方法で情報検索サービス事業者による収集を禁止する措置がとられた情報の収集を行わないことなど,政令で定める基準を満たす者に限る。)が,当該サービスを提供するために必要と認められる限度で行う複製等について,違法に送信可能化されていた著作物であることを知ったときはそれを用いないこと等の条件の下で,権利制限が認められました。(法第47条の6,令第7条の5,規則第4条の4関係)
平成21年通常国会 著作権法改正等について
僕自身、音楽がなくなったら生きていけないし、違法ダウンロードはやはり違法なのは間違いないと思います。ネットのコンテンツは無料だという混沌とした中で、これから有料コンテンツの可能性を探って行かなければいけないし、コンテンツの質を高めるためにも法を定めて、ネットの情報の価値を高めていくことが必要だと思います。
問題はその落とし所なのですね。
もし全ての著作物が対象になったらどうなるか
そうなるとどうなるのかというと、まあ考えてみて下さい。例えば我々、普段ネットを見てますよね。ネットを見ていて、例えば何々新聞の記事があったなーと思って検索をしてみると。検索をしてみて、それが朝日新聞とか読売新聞とか、彼らが作った記事にぶつかればいいですけど、たまたまそれをコピー&ペーストしたブログとかを見つけたと。それを資料として使おうと思って印刷しましたと。
でもそのブログに転載されたものって、明らかに権利者に無許諾のものですから、それは違法ですよね。それを印刷しましたと。皆さんの秘書の方々が、ちょっとこんな問題があってこういうふうになってますって言って、たまたま印刷した資料を持ってきた。でもそれ、違法行為になっちゃいますからね。たまたま、いいなー、これ、この綺麗な夕日の画像があったと、パソコンの壁紙にしたいなーと思って右クリックで壁紙にするってやったら、これもダウンロードですから、これも違法です。刑事罰もついてしまいます。
という、これだけ、すべての著作物が対象になって、これから電子書籍なんていうものも本格化するというときに、我々本当に日常的にインターネットで情報をとっているときに、それが違法か合法かというのはわからない状況でとってますし、それが音楽動画以外にも拡大されたときに、インターネットのユーザー9500万人ってさっき言いましたけど、多分日常的に使うユーザーの、まあ4000万とか5000万とか半分以上が、よく知らないままに、違法行為をしてしまう、そういう状況に繋がる法改正であるということは、非常に理解して頂きたいなとも思いますし。
そうなったときに本当に、インターネットという情報技術そのものが、国民の情報を知る権利なんかにも繋がってくる、非常に重要なものであるという、音楽業界を保護するという議論だけではなく、情報技術そのものに対しての秩序が変わってくる問題であるということですね。
違法ダウンロード刑罰化への津田大介氏の国会参考人発言を書き起こしました : akiyan.com
コピーガードされた CD/DVD のリッピングも場合によっては違法となります。
- 音楽CCCDを買ってCDプレーヤーで再生する:合法
- 音楽CCCDを買って携帯プレーヤーに入れる:違法
- 音楽CCCDをレンタルして携帯プレーヤーに入れる:違法
違法ダウンロード法(禁止法)まとめWiki
- 購入したDVDをDVDプレイヤーで再生する:合法
- 購入したDVDを自分のPCに落とす:違法
- レンタルしたDVDを自分のPCに落とす:違法
違法ダウンロード法案の存在に隠れていたACTAってなに?
データっていうのは実体のある物ではなくて「流れ」だと思うのですね。音楽データは「体験」で、その流れをビジネスのレールに乗せられなかったらもちろん売上も落ちると。時代の流れにあわせて「体験」を「実体のある形」として存在するかのような価値をあたえることができなかったから売上も落ちると。CD というのは記録メディアでしかありません。
違法ダウンロード法案の矛先がおかしいと思っていたら、その裏側には ACTA(Anti-Counterfeiting Trade Agreement:模倣品・海賊版拡散防止条約)の存在がありました。
プロバイダーがインターネットを監視することになると、国もそれを監視・操作できる権限を持つということですね。
つまり、震災後のネットでの個人発言のように検閲のない自由な発言をされると困る人たちがいて、その個の集合体の力を取り締まりたいと。それによってネットが、一部のテレビや雑誌のような作られた情報ばかりになるっていうのは極端だけど。
そしてOpJapanへ
Anonymous によって「OpJapan」というオペレーションが立ち上がりました。
OpJapan Official(Twitter)
Anon Ops からの声明文です。
Greetings land of the rising sun, we are Anonymous.
In recent years the content industry, politicians, and governments throughout the world have dramatically increased their efforts to combat internet piracy and copyright infringement. Unfortunately in doing so they have often taken the wrong approach which has lead to draconian laws, infringements of basic rights, and severely stunting the growth of technological innovations.
Japan, home to some of the greatest technological innovations throughout history has now decided to go down the path as well and cave into the pressures of the content industry to combat piracy and copyright infringement. Earlier this week Japan approved an amendment to its copyright law which will give authorities the right to imprison citizens for up to two years simply for downloading copyrighted material
We at Anonymous believe strongly that this will result in scores of unnecessary prison sentences to numerous innocent citizens while doing little to solve the underlying problem of legitimate copyright infringement.
If this situation alone wasn’t horrible enough already, the content industry is now pushing ISPs in Japan to implement surveillance technology that will spy on and every single internet user in Japan. This would be an unprecedented approach and severely reduce the amount of privacy law abiding citizens should have in a free society.
To the government of Japan and the Recording Industry Association of Japan, you can now expect us the same way we have come to expect you in violating our basic rights to privacy and to an open internet.
We Are Anonymous
We Are Legion
We Do Not Forgive
We Do Not Forget
Expect Us
いくつか日本語訳は存在しますが、意訳させてもらいますね。Google翻訳さんよろしくね。
日出ずる国の皆さん、こんにちは。私たちはアノニマスです。
近年、世界中のコンテンツ産業、政治家、そして政府は、インターネット上の違法行為や著作権侵害との戦いを激化してきました。
残念ながら、この動きの中で間違った強権的な法律が作られ、基本的人権の侵害や技術革新も阻害されてきました。
今回、歴史的にも偉大な技術革新を多く行なってきた日本もまた、コンテンツ産業の圧力に屈しました。
そして先週、違法にアップロードされた音楽・映像ファイルをダウンロードした場合、2年以下の懲役または200万以下の罰金を科せられる「違法ダウンロード刑事罰化」という著作権の改正が行われました。
私たちアノニマスは、この法改正によって多くの国民を犯罪者にすることにつながるうえ、著作権侵害の問題そのものの解決にはほとんど効果はないと強く信じています。
さらにこの状況を悪化させるかのように、コンテンツ産業は日本中のプロバイダーに対して、日本中のインターネット利用者を監視するシステムを導入するように圧力をかけています。これは、法を厳守する罪のない国民の自由を奪うことに繋がります。
日本政府と日本レコード協会の皆さん、あなたたちが国民のプライバシーや自由なインターネットの権利を侵害するように、私たちもあなたたちに対して同じことを行うので待っていてください。
私たちはアノニマスである
私たちは個の集合体である
私たちは許さない
私たちは忘れない
覚悟しなさい
有料コンテンツ普及への道
違法ダウンロード刑罰化はなにも悪いことだけではないと思います。ただ落とし所が悪いだけです。
たとえば、お金をだして旅行にいったり映画を観ると、その中でなにかしらの良さや価値を見つけようとするものです。同じように、有料コンテンツは人の心を動かす力を持ちます。だからこそ、そのコンテンツは強権的な法律で規制されるものであってはいけないと思うのですね。
このページはただのコピペやまとめではありません。個人の思想が込められており、それが伝わるように編集された記事です。編集者の意図する方向に考えを傾かせることだってできるし、ただのコピペだとしてもその切り取った部分が意味を持ちます。
同じデモに参加している人がまったく同じ思想だとは思いません。もしそうであるならば、ひとつの思想を持った組織に属しているスピーカーでしかないのですから。
インターネットは、個の集合体であってほしいと強く願います。
最後までお読みいただきありがとうございました。もし共感されるところがありましたらシェアしていただけると嬉しいです。
後記
法と秩序を重んじる Law、混沌と争いを重んじる Chaos、無属性の Neutral という属性があったとして、いままで戦争を起こしてきたのは Law だからな。振り切っちゃうのはよくないと思う。
否定するよりもまずは原因や経緯、その裏側にある狙いを知らないと解決につながらないと思うな。力技の人海戦術もいいけど、内部から攻める頭脳戦も必要と思う。日本には日本のやり方があるはず。