波紋と螺旋とフィボナッチ: 数理の眼鏡でみえてくる生命の形の神秘」を要約メモ。

ふせんだらけになるくらい面白かった!

カニなどの甲殻類や昆虫は「ぶっ壊し+作り直し法(脱皮)」を採用している。あの複雑な鎧は、徐々に大きくするのは不可能。外側には生きた細胞がいないので、構造体を外側に重ねていくことはできない。脱皮は一見無駄にみえるが、体を作る仕組みの制限から導かれる必然的なもの。

三次元のらせん体の形を決めるパラメーターは、拡大率、付加する円盤のつぶし方、つぶした方向の回転の3つ。このパラメーターを変えることで、あらゆるらせん形が作れる。 このような「付け加え」によって拡大していく成長のやり方は「付加成長」と呼ばれており、ウシやヒツジの角、ゾウの牙がそう。

生き物の形は、一見バラエティに富んでいるようだが、各動物門ごとに一定の規則に従っており、体の形を作る仕組みが共通。逆に言えば「想定外」の形態が現れた時には、ここには何かまったく違った原理が働いているとわかる。

一般的に、貝やアンモナイトの形は「等角らせん」であることがわかっている。原点から放射状に出る線分との角度が一定ならせん。

垂直、曲げ、曲げ+ひねりへと外形を変えることで、内部の体積が同じにもかかわらずコンパクトさが向上していく。

アンモナイトの巻き方は平面巻き(ひねり=0)ではなく、ひねりを加えることで全体のバランスを調整し、顔が正常な向きを向くようになっていた。

アンモナイト本体が「開口部の向きを保とうとして成長方向を決める」ということは、「形を作る情報は脳内に存在する」という、思いもよらない結論を生む。

遺伝因子と複数の形質の関係…

  1. 1個の遺伝因子にすべての形質が乗っている。
  2. 遺伝因子は複数あり、1個の遺伝因子に複数の形質が乗っている。
  3. 1個の遺伝因子には1つの形質しか乗っていない。

の3通りがある。連鎖がある場合1か2になるが、メンデル(グレゴール・ヨハン・メンデル)は3の結論を出している。

どの魚の模様も、内部の骨や筋肉の構造とは似ても似つかない。このことから「皮膚の模様と体の内部の構造はまったく関係ない」ということがわかる。
言い換えれば「模様を作る仕組みは、体の内部と関係なく皮膚の中だけで働いている」ということになる。

ゼブラフィッシュの皮膚を顕微鏡で見ると、模様はベタ塗りではなく、黒と黄色の色素細胞のモザイクでできている。この2種類の細胞の配置が模様になる。

遠距離の生存促進

  1. 黄色が増える
  2. 黄色は黒の生存を助ける(増やす)ので、黒も増える
  3. 黒は黄色を排除する効果があるので、黄色は減り、元に戻る
  1. 黄色が減る
  2. 黄色から黒への生存促進効果が減り、黒が減る
  3. 黒による排除効果がなくなるので黄色が増え、元にもどる

いずれの場合も、この制御回路は細胞の増減に対して逆に働き、黄色と黒の割合を一定に保とうとする。

近距離の排除効果

  1. 黄色が増える
  2. 黄色の排除効果により黒が減る
  3. 黒の排除効果も減るので、黄色はさらに増える。最終的にすべて黄色になる
  1. 黒が増える
  2. 排除効果により黄色が減る
  3. 黄色の排除効果も減るので、黒はさらに増える。最終的に黒だけになる。

回路の中に、2つの抑制反応があると、否定の否定になるので、全体として自分自身の増減を促進する方向に働く。

シマウマとウマの中間の模様は、細くてコントラストの弱いストライプ(白黒ではなく、薄茶と濃い茶)になる。
完全な分離が得られなくなり、距離の差が一定以下になると、もはや波をつくれなくなり均一の中間色になってしまう。

メロン、キリンの皮膚模様、地面のひび割れ模様、トンボの羽の模様は似ている。

  1. 表層は、乾燥により収縮。低層は、底面と接着しているので収縮しない。
  2. ランダムな場所でひび割れが起きる。ひび割れの周辺で張力が開放される。遠いところは張力が残る。
  3. 張力の高いところがひび割れると、結果的に等間隔のひび割れになる。

炭酸カルシウムの粉に水を加えてよく混ぜる。これを乾かすと田んぼのような、方向性のないひび割れになる。
この器を少し揺すってみると、きれいな平行線のひび割れができる。同じように、回転方向に揺すってみると放射状のひびができる。

指紋は反応拡散波(Turing波)。波紋のように広がる。皮膚の異なる層に生じる成長速度の不均一が、波ができる原因。

結晶にできるらせん

結晶に1つの分子が加わる過程。接触面が1つの場合は結合力があまり強くない。接触面は2つ、3つと増えれば結合力がさらに高まる。
結晶化は同じ速度で並進するはずだが、特異点を中心に回転する場合、中心近くでは径が小さいので、その分回転が早くなる。その結果どんどん巻き込んでいって、らせんが生じる。

ロマネスコのらせん構造はフィボナッチ数列になっている。

フィボナッチ数列は、公比が黄金比の等比数列に収束する。フィボナッチ数列と黄金比は、ほとんど同じもの。

植物を上から見ると、葉がらせん状に茎から生えている。黄金角(137.507…)に生えていくことで、葉っぱが重ならないようになっている。起点の付近をみると、フィボナッチ数列が並んでいる。

魚の縞模様は動く。1週間2週間と観察するうちに、反応拡散波(Turing波)が見えてくる。

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