もくじ
「小さな会社を強くする ブランドづくりの教科書」を要約メモです。
「京都」「沖縄」「北海道」には、単なる地名を超えた何かがある。イメージが頭に浮かばないものは、人々には選択されにくい。
ブランド≠名前、ブランド≠知名度。品質がまったく同じだとしても、選ばれる商品と選ばれない商品がある。
ディズニーランドはただのテーマパークの名前ではない、松阪牛はただの牛肉の名前ではない、軽井沢は単なる地名ではない。名前を超えたブランド。
強いブランドは、名前を聞いただけでそれを利用している人のイメージが浮かぶ、独自の世界観がある。
名前+品質+意味=強いブランド。顧客の心にある、品質を超えたポジティブなイメージ。
強いブランドが好業績な理由
- 数量プレミアム効果
品質が同じだったとしても、競争製品に比べて選ばれやすくなる。 - 価格プレミアム効果
消費者の価格への受容度を引き上げるため、高い価格を設定することができる。 - リピート効果
次回もそのブランドを購入したいというリピート顧客が増える。 - クチコミ効果
クチコミによって、顧客が顧客を呼ぶメカニズムが作用する。
強いブランドは、顧客との絆、すなわち「顧客ロイヤルティ」を高めてくれる。
強いブランドを規定する条件
- 明確なコンセプト、明快なイメージ
コンセプトが明確、イメージが明快。 - 完成に訴求する
デザインが優れている、感性に訴えかける商品である。 - 独自のポジショニングがある
競合商品が少ない、その商品を他の商品で代替することは難しい。 - 低価格ではない
価格が安い(負の相関)、価格のやすさが魅力的である(負の相関)
ブランド・アイデンティティを設定するための3つの条件
- 価値性
消費者が求めているのは商品そのものではなく、その商品がもたらす価値。売り手ではなく、買い手の視点から考えることが大切。 - 独自性
平均的なもの、無難なもの、普通のものの価値は下がる傾向にある。独自性や個性が価値になる。 - 共感性
顧客から「いいね」と共感を受けること。
アメーラ(トマト)のブランド・アイデンティティは「最高品質の高糖度トマトで、おいしさの感動をお届けします」。
価値性(最高品質)、独自性(高糖度トマト)、共感性(おいしさの感動)が含まれている。
「トマトの購入に、1回あたりいくらまで払えますか?」に対する消費者の回答は「335円」。
「おいしさの感動に、1回あたりいくらまで払えますか?」では「8,939円」。
ブランドの価値
- ルイ・ヴィトン
【機能的価値】丈夫だから、品質が良い、長持ちする
【情緒的価値】デザインが好き、おしゃれ、ステータス感がある - スターバックス
【機能的価値】味が好き、おいしい
【情緒的価値】おしゃれ、雰囲気が好き、くつろげる - アップル
【機能的価値】使いやすい、性能が良い、機能
【情緒的価値】デザインが好き、かっこいい、スタイリッシュ - ディズニーランド
【機能的価値】アトラクション、キャラクター
【情緒的価値】夢がある、楽しい、現実を忘れられる
富士山の次に高い山は阿蘇山だが、二番目に有名な山ではない。しかし「カルデラ火山」というカテゴリーでは圧倒的にナンバーワン。
ジャングルは水も豊富で芽が出やすいが、誰にも気が付かれない。新規参入が容易なジャングル地帯では、ブランドづくりは困難。
特定カテゴリーでのトップになる
- 小さなマーケットにポジショニングする
大きな企業が参入できない市場は格段に増えている。 - カテゴリーを切り取る
「山」という大きなカテゴリーではなく、「カルデラ火山」というカテゴリーでトップになる。 - カテゴリーの一部を反転させる
男性↔女性、和菓子↔洋菓子など。 - 特定カテゴリーの高級化市場に特化する
高級化市場では、小さな企業の方が優位性は高い。 - 特定エリアにフォーカスする
徹底的な地域密着型戦略で、特定の地域でトップになる。 - 特定グループにフォーカスする
ターゲット消費者を絞り、特定消費者グループから熱狂的な支持を受ける。
消費者はどこにでもあるものには高いお金は出さない。
「みんながやるなら自分はやらない。既存のブランドとは逆方向にいく」という逆張りの発想が必要。
スターバックスの創業時のロゴには、コーヒー、ティー、スパイスと書かれている。コーヒーに焦点を絞ったことが飛躍のきっかけ。強いブランドを作るためには「引き算の発想」が必要。
前者よりも後者の方が惹かれやすい。
「とても甘く、酸味も高く、うまみもあり、香りもよく、栄養価が高いトマトです」
「とても甘いトマトです。それだけでなく、酸味もうまみもあり、香りもよく、高い栄養価があります」
まず何かひとつに絞り込み、そのあとで実はこのような特徴がありますと伝達している。最初からすべてを伝えるのはなく、まず何かで惹きつける。その後で、実はこのようなメリットもありますと伝えたほうが効果的。二段階訴求。
(自社名)といえば、○○。○○といえば、□□。□□に入るブランドは、トップ・オブ・マインドと呼ばれる。
優れたブランドは、欠点があったとしてもそれを補う強みがある。突出した強みは欠点を補ってくれる。「ハロー効果」によって、「何かに突出していると、他の要素も良いだろう」と思われやすい。
弱みを改善しても偏差値50になるだけ。強みをみつけ、それを徹底的に伸ばす姿勢がブランドづくりには求められる。
ブランドで「鉛」を「金」に変えることはできない。「金」を「より輝く金」に変えてくれるのがブランド。
「よい品物をつくることでブランドとして根付く」「いいものを提供すれば自然とブランド化する」は間違い。品質を超えた「何か」が必要。
品質が優れていても、売れていない商品は山のように存在する。売り手が認識する品質ではなく、買い手が感じる品質、「知覚品質」を高めることが不可欠。
知覚品質を高める要素
- 品質の有形化
こだわりを伝えるために、こだわりのあるパッケージにするなど。品質を形にする。 - 体験してもらう
おいしい静岡茶を静岡の美しい茶畑で飲んでもらうなど。 - 五感、情緒に訴える
理性だけでなく、感性に訴える。ブランドに込められた心は人を動かし、知覚品質を高める。 - 低価格ではない
低価格戦略をとると、安かろう悪かろうの心理メカニズムが働き、知覚品質を下げる懸念がある。強いブランドは、高い品質に見合う価格で販売されている。 - 希少性
ここにしかない(場所の限定)、この時期しかない(時間の限定)、これだけしかない(数量の限定)といった希少性は、知覚品質を高める。 - オリジナリティ
平均的な商品よりも、個性、独自性のある商品のほうが知覚品質は高まる。 - 物語性
そのブランドの歴史、生産の苦労話、途中の失敗、ブランドにまつわるエピソードなどの物語は知覚品質を高める。 - 社会的証明
論より証拠。個人的な主張よりも、社会的な証明のほうが説得力が高く、知覚品質を高める。
プロ(売り手)の評価と消費者(買い手)の評価には、まったく相関がない。
- 買い手のものさしを変えること。売り手のものさしを顧客に教えて、消費者を変える。
- 売り手のものさしを変える。消費者にあわせて企業が変わる。
- 売り手と買い手でものさしを共創する。売り手は「ブランドのありたい姿」を買い手に投げかける。買い手はそれに反応する。売り手はその反応を受け止め、次の提案に活かす。
「脅威」は「機会」にも変化しうる。「弱み」と「強み」もコインの裏表。
生産量が少ない→希少な商品
販売員が少ない→顧客との絆を深めやすい
価格が高い→低価格にこだわらない、質の高い顧客を集めることができる。
立地が悪い→周辺に競合店がいない。賃料が安い。
知名度が低い→知る人ぞ知る
業界の「常識」というのは「多くの人がそう考えている」にすぎない。「多くの人にとって好ましい」ではない。消費者は、本当にトマトにヘタがあることを求めているだろうか。
ブランド要素
パッケージ、ロゴ、シンボル、キャラクター、ネーム、書体、色彩、Webサイト、パンフレット、リーフレット、POP、プライスカード、店頭、看板、制服など
ブランド・アイデンティティを具体化した「ブランド要素」のハーモニーが重要。ブランド要素間に統一感を出していく。トーンマナーを揃える。
音感の良さ
シソ→ラベンダー
ヘレボラス→クリスマスローズ
テッセン→クレチマス
ショウジョウボク→ポインセチア
名前は人の行動を変える力を持つ。ブランドの特徴は名前の中に明示するのではなく、暗示するほうがよい。
そのシーンにフィットする名前をつける。「アメーラのサラダ」「あまおうのタルト」など。
マクドナルドで買いたい人の特性
- 食のボリューム、こってり志向が強い人
- ブランド志向が強い人
- 低価格志向が強い人
- ネットで買い物志向が強い人
- リピート志向が強い人
ヘルシー志向に訴求した「サラダマック」がうまくいかなった理由も理解できる。
インパクトや驚きは、最初はパワーを持つが、時がたてば次第に弱まっていく。クチコミで獲得した顧客はリピーターになる可能性が高い。類は友を呼ぶ。
価格の安さでひきつけた顧客はリピーターになりにくい。低価格を重視する顧客は、別のブランドが安売りをしたら、そちらにうつってしまう。
インフルエンサーの力
ターゲット顧客に対して発信力と影響力を持つ人達「インフルエンサー」を特定し、深いブランド情報を提供する。その後、インフルエンサーからのクチコミを通して、消費者に情報が広がっていくという、二段階のコミュニケーション。
価格には、品質を変える力がある。「高級な茶葉は、やっぱり味が違う!」「高い茶葉の香りは格別ですね」
ハーモニーのあるブランド拡張
拡張する商品が、ブランド・アイデンティティと競合しているか?
ブランド拡張によって、現在のブランド価値がさらに高まるのか?
このふたつの問いに対する答えがイエスであれば、ブランド拡張を進めるべき。
どんなに強力なブランドでも、磨かなければ徐々に陳腐化していく。コカ・コーラのブランド価値は世界一だが、今もあれだけのテレビCM、店頭プロモーション、PR活動を続けている。
ブランドが失敗する10の理由
- 品質管理がしっかりしていない
品質はブランドづくりの土台。 - 戦略がない
ブランドづくりには羅針盤が不可欠。 - 共感性の欠如
消費者が持っているイメージ、期待、信頼にそむく商品は、強いブランドにはならない。 - コミュニケーションに一貫性がない
場当たり的なコミュニケーションをいくら繰り返していても強いブランドはできない。 - 無関係なブランド拡張
ブランドをむやみに広げると、ブランド価値は希釈化されてしまう。 - なんでも屋になる
「いろいろあります」「たくさんあります」でブランドはできない。強いブランドは焦点が絞られている。 - 消費者の声を聞かない
諸費者との情報のキャッチボールをしないと、ひとりよがりのブランドになってしまう。 - 値引き競争をする
安さを売りにする商品は強いブランドにはならない。価格競争に巻き込まれる商品はブランドではない。 - 感性に訴えない
機能やコストだけによる勝負では、ブランドづくりはできない。強いブランドは感情に訴える。 - 動きがない
チャレンジせず、現状維持でよしとすると、ブランド力は弱体化していく。
進化し続けることが、生き残る道。