かなり頻繁にカレーを食べる。何を食べようかと考えるとき、まずはカレーかカレーじゃないかを考えるくらいだ。ただし、外でご飯を食べようとするときはあまりカレーが頭に浮かばない。カレーには作る楽しさがあるのだ。
カレーを想う瞬間からカレー作りは始まっている。1人分を作るときは、角切りの豚肉と、タマネギ1個、ジャガイモ1個、ニンジンは半分だ。タマネギを半分に切り、片方をみじん切りにし、もう片方を大きめに切る。ジャガイモは1つを12当分する。ジャガイモと同じ大きさにニンジンも切る。
これが基本の切り方だが、たまに気分を変えてキーマカレーにする。こちらは材料を細かく切る。皿に低くご飯を盛り、その上にキーマカレーをのせる。食べるときは、ご飯とキーマカレーを丁寧にすくって口に運ぶ。食べ終わったときに、皿にカレーがついていないのが美しい。そうすれば「あぁキーマカレーを美しく食べたのだ」と思う。ただそれだけだ。
話を基本のカレーに戻す。みじん切りにしたタマネギを弱火で炒める。きつね色にならずとも、少ししなっとしてきたくらいで肉を入れて炒める。次に残りのタマネギとジャガイモ、ニンジンを入れ、火が通ってきたら少しの水を入れて蒸し焼きのように煮込む。水を入れすぎないで仕上げるのが、この基本のカレーのポイントだ。
煮込んでいる間、なぜカレーの材料を炒める必要があるのか考える。これは、煮込みで得られる温度はせいぜい100℃ほどだが、炒めで得られる温度はそれよりももっと高い。高い温度で材料を調理することで、いっきに旨みが増す。肉は最初に炒めることで、旨味を封じ込める。というのが通説のようだが、この基本のカレーでは炒めることで水っぽくなるのを防いでいる。具材からでる水分をある程度飛ばしながらも、その水分を大切に使ってカレーを作っていくのだ。
そういえば圧力鍋でカレーを作った時、高温での煮込み時間が長すぎて具材を溶かしてしまったことがある。ジャガイモやタマネギ、肉はすべて溶けて何もなくなってしまったのだが、ニンジンだけは色と形を保っていた。ニンジンはすべてを許容する宇宙だ。
豚肉に火が通っていれば、気にすべきはジャガイモだ。煮込みすぎず、ほっくりと歯ごたえが残っているくらいが良い。少し煮込んだら、最後にミニトマトを入れる。ホールトマトを使わないのは、トマトとルーを完全に混ぜてしまわないためだ。食べる時に口の中でトマトとルーがいまこの瞬間に混ざるのがよい。
市販のルーは本当にクオリティが高い。使うのはジャワカレーの辛口。もしくは、仕上げ用のガラムマサラがついたジャワカレー スパイシーブレンドだ。ルーに隠し味や調味料は加えず、このまま溶かして仕上げるのがもっとも美味しいカレーを作る方法だ。
基本のカレーは基本のカレーとして、カレーは常に変えていく必要がある。その時の自分の状態によって、体が必要としているカレーは違うからだ。具はジャガイモ、タマネギ、ニンジンをベースとして、季節の野菜、山菜やタケノコなども食感香り共に良い。白菜を使って、野菜から出る水分だけで作るカレーも良い。
近年食べたカレーで衝撃を受けたものがあるので特記したい。上野のデリーのカシミールカレーである。ひと口食べた瞬間から衝撃的に辛く、味わったことのない旨辛だった。そしてどこまでも続く深みがあった。
素潜りの世界で、肉眼でしか味わえないディープブルーという色がある。口の中が今まで到達したことのない深みへとフリーフォールを始めた。少しでも精神が乱れれば辛さにやられてブラックアウトしてしまうだろう。汝、迷うことなく進めば良い。そうサポートしてくれるものは、テーブルの上にいる。
テーブルの付け合わせも良い。タマネギとキュウリ。タマネギはソースも辛い上に素材の辛味も十分に残っている。キュウリがまたカシミールカレーに良く合う。カシミールカレーは、市販のレトルトもある。しかしこの付け合わせを食すことができないのだ。わざわざ上野本店まで行って食べる価値がここにある。
さて基本のカレーの食べ方だが、ご飯を右上、カレーが左下になるようにして食べる。以前テレビで、イチローが大好きなカレーを食べるシーンがあった。ご飯が左、カレーが右だった。スプーンでご飯を一口分崩してから、カレーを少しすくって食べていたのが印象的だった。自分の中にはないカレーの価値観も取り入れ、常に何かを変えていく姿勢はとても大切だと思う。皿を置く角度が変われば食べ方も変わる。そうすれば、さかのぼってカレーの作り方も変える必要があるだろう。
緻密な計算に裏打ちされたスタイリッシュな食べ方。カレーを作りそれを食べる美学は、人の生き方を映しだす。スプーンにすくったカレーは、その人の美学の総和である。
――さて、少し煮込もう。
予約方法 | 予約不可。当日管理棟に行ってチェックイン。 |
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キャンプ場 | 道志の森キャンプ場 |
場所 | 山中湖の側 |
地図 | 山梨県南都留郡道志村 10701 |
洗い場 | あり |
トイレ | 水洗 |
風呂/シャワー | 温水シャワーあり。車で30分の距離に温泉施設「石割の湯」あり。 |
ケータイの電波 | あり(SoftBank) |
ゴミ | 持ち帰り |
その他 | 広いキャンプ場だが、土日はどのエリアもほぼ100%の利用率になる。冬は水道管破裂防止のため止水される。そのため、洗い場や水洗トイレ(水洗じゃないものは利用可)が使えなくなるので注意。 |