もくじ
仕事は人生の大部分
仕事というのは人生の大部分の時間を占めるものです。僕は自分の業界の特殊な商習慣を見てきました。それらがこの先5年後10年後も正常に機能するとは思えないので、新しい流れのもとに何かを変えていきたいと考えています。いまこのタイミングで変わらないと変われなくなってしまうからです。大きな制作プロダクションは、新しい仕組みを取り入れたり挑戦的な部署を作ったりなど積極的に動いているようですね。
茹でガエルにはならない
まずは「働き方を考える」ための時間的な余裕が必要です。時間はすべての人に対してもっと開放されるべきだし、まずは仕事の時間にすき間を作らないと心に光が当たらないと思うのです。
茹でガエルの実験というたとえ話があります。熱湯にカエルを入れるとびっくりしてすぐに飛び出すけれど、冷たい水の中にカエルを入れて、それを徐々に温めて沸騰するまで放っておくと、カエルは茹で上がって死んでしまうというお話です。大きな変化には気が付きやすいけれど、小さな変化はその過程でマヒしてしまうということですね。常に自分の箱の外郭を壊し続けることは大切だと思うのです。
「仕事とはこういうものだ」と盲目になっている人に対して、そう簡単に考え方を変えてもらうのは難しいですよね。ここは会社レベルで大きく動くことも必要なのだと思います。週一でもいいから残業禁止の日を作って、その日は朝から本末転倒ではあるけれどいかに残業せずに仕事を効率的に進められるか、もしそれが難しいのならどこに問題があって何を解決すればいいのか。
クリエイティブの仕事は下請けほど、つまり孫請け、ひ孫請けへと下流に行くほど、残業をしないというのは難しいと思います。昔ながらの商習慣で仕事を続けてきてしまったことが原因なのだと思います。
これからの働き方を考える
何を突拍子もない事をと思われるかも知れませんが、いまの仕事を1日4時間、もう1つ新たな仕事を3時間として、「4時間:3時間」の働き方を実行していけないかなと考えています。4や3という数字自体には深い意味はなく感覚的なものです。
ポイントはいまの仕事にあてる時間を半分にすること。4時間の中でいかに時間密度を高めて効率的に仕事ができるか、その環境を整備できるかです。もう1つのポイントは新たな仕事を始めることです。あとの3時間で何をするかですが、僕は今の仕事とはジャンルが違う対極にあるような仕事をしたいなと思います。ほとんど趣味のようなものでもいいかもしれません。自分で選んだ2つ以上のことを仕事にしていけるなんて想像するとワクワクしてきませんか?
「4時間:3時間」のうち、どちらがメインでサブととらえてもいいし、それがいつか入れ替わったり繋がったりしてもいいし、両方メインでも両方サブでもいいのです。片方の時間は報酬を得るための仕事ではなく自分のスキルアップのために使ってもいいわけです。たった1つの組織に縛られることなく、幅広いスキルセットを生かした働き方をしていけるのが理想的ではないかなと思います。もちろん特殊な案件は別のお話です。
仕事スイッチを入れる
時間は正確で平等なようで、実は人それぞれに流れている時間のスピードは違うと思います。作業効率を最大化して時間密度を高めることで、4時間も集中するとだいたいのことはできます。働く時間を4時間に制限して時間密度を高めるためには、やるべきではないいくつかのことを排除する必要がありますよね。
クリエイティブの仕事は、何も時間的制約のないところでは効率的に進みにくく、ある程度忙しい人、つまりすでにゾーンに入っている人の方が効率よく仕事が進むことがあります。デザイナーが無駄な空き時間を嫌うのは自分がゾーンから抜けてしまうことを避けたいからだと思うのです。
幅広いスキルセットを身につける
「スキル」から「スキルセット」へです。単体のスキルだけではなく、総合的なスキルセットという考え方が必要だと思います。たとえばマーケティングスキルをもったデザイナーです。感覚として1mmにこだわるデザイナーではなく、マーケティングスキルを持ったデザイナーがそのデザインの意味を言語化できる能力が求められているということです。特にマーケティングやプランニングはデザイナーのようにセンスのある人が行うべきだと思います。
制作プロダクションの方とたまに会って情報交換をすることがありますが、マーケティング/ブランディング、その他のスキルセットを持った会社が増えているように感じます。スキルは常にアップデートしていくことが重要で、時代とともに変化していくべきです。
モジュールデザインという考え方、個の集合体でモジュール化
同じスキルを持つ人を集めて量産体制を整えるのではなく、状況に応じてスキルを組み合わせて強力なスキルセットを組み立てるという考え方です。必要に応じてプロジェクトを立ち上げ、社内外問わずチームとして仕事をするということです。スキルは会社ではなく個人の中に蓄積されていくものです。
会社にとって毎日必要なスキルではないけれど、一時的に必要になるスキルというのがあると思います。たとえばサービス業でデザイナーを含めてブランディングを行なったり、IoTの制作現場にファッションデザイナーを入れることもできます。より広い外郭で捉えて仕組み自体を変えていくべきだと思います。
電話ではなくテキストベースで仕事を進めていけるスキル
お互いの作業効率を最大化するためにも、伝えたいことをテキスト化するスキルは大切です。必ずしも上手である必要はなく、伝えたいことがテキストで伝わるかどうかです。伝えると伝わるは違います。
クリエイティブの仕事で、1日中電話メインで仕事を進めていると1日4時間では仕事は終わりません。クリエイティブは断片的な時間の積み重ねではなく、継続して集中した時間が大切だと考えています。直電はお互いの作業効率を落とし、クリエイティビティを阻害します。ある種の人には理解できないかも知れませんが、自分が生きている世界とは異なる世界があることは理解しておくべきです。もちろん、電話でのやりとりが無駄なものだというつもりはありません。電話でしか話せないような特殊な案件もありますし、ざっくばらんに話した方がいい場合もあります。このあたりは人それぞれの仕事のやり方があるので、全く異なる価値観があるのは当然で、たびたび議論されていることです。実際にそれができている会社のシンプルな記事があったので以下に紹介します。
電話に出なくて良い会社
僕は特殊な仕事を除き、基本的に前後関係のない直電はでません。こちら側の用意がまったくできていないからです。同じようにこちらのタイミングで折り返しても相手側の準備ができていないのですから。
横に並んで一緒にゴールへと向かっていけること
正面で向き合って「発注側 vs 受注側」とするのではなく、お互いが横に並んで同じゴールをみてチームとして仕事を進めていきたいと考えています。
目的を達成するための手段は1つではありません。制作の途中で何か問題が起こったときに素早く手段を変更する必要があります。さらに良い手段が見つかればすぐに取り入れて行くべきです。特にWebでは早いテクノロジーの変化に素早く対応し続けていくために、不確実性を受け入れることも必要です。そのために横並びの関係性であることは強みです。新しいことを取り入れようとする時に企画書作成やプレゼンから始めていては、よほど大企業でなければスピードで損をすることにつながります。
情報をオープンにして、制作現場に権限を持たせる
プロジェクト内で蓄積されたスキルやノウハウはどんどん外部に公開していくべきです。社内会議で決定したことを外部に発注するという流れではなく、企画段階で外部の協力者と一緒にアイデアを膨らませてものづくりをしていける関係性です。
現場に権限を持たせることは、現場の動きを理解していない上司に判断をゆだねるよりも良い結果が得られ、スピードを高めることができると思います。現場で日々改善される仕組みづくりはとても大きな価値を持つと思います。また、情報がオープンになっていて賑わっている場所には自然と優秀な人が集まってきます。これらはコンプライアンスとはまた違うお話です。
常に良い方法を模索し続けていくこと
何にもとらわれずに、目の前の問題の解決を目指していけること。それを阻害する古い悪いやり方を継承しないことです。良い部分も悪い部分もその集合体の中では継承されます。特に小さな会社であれば、社長の理念がそのまま社員に影響を及ぼしますよね。
どのやり方が良い悪いではなくお互いの相性なので、ここで何かを定義するものではないのですが、自分は自分の理想の働き方をしていきたいし、自分の周りの人もそうであって欲しいと願います。常により良い方法を模索して変え続けていく姿勢が大切だと思います。
どの属性の人と仕事がしたいか、マッチングを大切にする
お互いの価値観の違いがあることを理解した上で、クライアントを選ぶということです。
GWはカレンダー通りお休みをもらった人ですか?
最大連休でしたか?
少しずらしてお休みを取りましたか?
そもそも連休は休むという概念で生きていない人ですか?
どのやり方が良い悪いということではなく、お互いの仕事のやり方が合うか合わないかというお話です。同じ価値観を共有できる人同士が集まり、価値観の違う人はどちらからともなく離れていくのでしょう。
テクノロジーの進化に素早く対応する
人工知能の最初の仕事は、コンピュータが増やした仕事をコンピュータが回収していくことなのかなと思っています。
パソコンを使わなければ簡単に終えていた仕事も、今ではいくつかのアプリを使うことで余計なエラーに悩まされたり、無駄な選択を毎日求められています。そういった本来は人がやるべきではない、パソコンによって作られた仕事というのを人工知能がやってくれるようになるべきですよね。
人工知能は人間よりも生活水準が高く運営コストも高いです。人間は人工知能に雇われる可能性があるということですね。食べていくためのライスワークだから仕方がないと自分を納得させて誰のためにもならない仕事を続けていると、人工知能に仕事を与えられて人工知能に使われていく側の人になるのではないかと思うのです。
働き方の集合知
会社という枠を超えて、働き方を徐々にシフトしつつある人たちがいるのは事実だと思います。
いま何かを変えないと変われなくなってしまう。そう感じ取っていても何をどう動かせばいいのか、本当に変わっていけるのか、色んな試行錯誤が必要だと思います。ある程度自分の働き方を変えられる人はその情報を共有していきませんか?新しい働き方というのは、ある種のリテラシーの高い人だけで賑わっていても全体は変わらないと思います。会社など自分以外の所から降りてくるのではなく、自分から情報を取りに行く。その情報を取りに行くための集合知としてネットがあるという図式が理想的です。
本当に自分の経験として実現させて、それを言語化して共有することが大切だと思います。なんとなくの感情論で新しいものをおすすめすることは避けたいのです。働くというのは、多くの人にとっての人生の大部分です。いま実現したいことは問題の解決です。良い未来のための地盤づくりです。
この理想を実現するために、自分とその周辺から変わっていけるといいなと思います。