もくじ
キャラクターをみんなでかわいいと言って遊んでいた。それは着ぐるみで、中に人が入っていることはわかっているけれど、キャラクターという体(てい)で受け入れていた。
それがある日、その着ぐるみからガチのチンコが出てきた。キャラクターだと思っていたそれは、自分のことを異性としてみて性的に興奮していた。人々は夢から覚めて、目の前には真に美しい花が咲き乱れた、みたいな話を書きました。(違う)
ハイブランドの商品はなぜ高いのか
ハイブランドは、なぜそれほど商品価格が高いのか。それを明確に説明できない限り、いつか時代の流れによって淘汰されていく。受け取り側が作り出しているブランディングではなく、ブランド側が持っているブランドたるものは何なのかということです。たとえばブランド哲学や歴史、職人の技などがそれにあたりますが、ハイブランドとて、デザインのトーンマナーを中国ウケすることに振り切ってビジネスを行うのです。虎や龍が出てきたりね。
ブランドの夢が冷めてしまったというべきか、目が覚めた人たちが物事の本質を問わんとするブランドが生まれています。最近良い勢いで動いているDTC(Direct to Consumer)系のブランドです。こうやって日本でも多くの人が知るくらいにまでなって、現地でのVC調達も日々捗っているようです。少し前まではD2Cという表記だったと思うのですが、DTCで定着しつつあるようですね。
US Consumer & EC Brand Database
DTC(Direct to Consumer)
たとえばEverlaneは商品価格だけでなく、材料費、部品費、人件費、関税、輸送費を公開し、商品価格の透明化を行なっています。
Everlane 日本
ファストファッションとは違って、商品価格を抑えるために何かを犠牲にしている訳ではありません。素材、縫製、シルエットの良さ、環境に配慮した製法にいたるまで一貫したブランド哲学を持って存在しています。
これまでの、ブランドを中心とした、工場、卸業者、小売店との連携の悪さ。それによりユーザーに届いた時の商品価格の膨らみ。こういった効率の悪さに対するアンチテーゼを感じるのです。
それぞれ分業された中に問題を抱える上に、それぞれの作業範囲のグラデーションが途切れる所が存在しているのだと思います。
不透明な生産見積や生産管理。ブランドが生産を管理しきれていない。デザイナーがパタンナー任せにしてしまっている。
展示会への出店費用や、契約によるマージン。販路とブランディング能力がないことから、卸に頼らざるを得ない。
利益率の確保。委託か買取かはショップの強さや実績で決まる。
その結果、本来は得意分野を分業することで、よりよい結果を生み出すはずの仕組みが、分断へと繋がっているのだと思います。新しい素材を知らないブランドはいつまでも古い素材を使い続けているし、生産ラインに縛られて、よりよい商品開発のためにエネルギーが注がれていないなど。
生産管理ができれば在庫管理ができます。工場は大手ブランドの発注が入る時期には、繁忙期であることや最小ロット数の問題で、生産にかかる単価が上がる場合があります。逆にそれ以外の端境期などはもう少し単価を交渉できたりします。価格が決まっているようで決まっていない、要は、生産工場は効率よく100%の稼働率を保っていたい訳ですね。
ブランド哲学
商品そのものに価値があれば、それ自体がブランドの価値として形成されていくことをDTC系のブランドは証明してみせました。
人は同じ機能のものをいくつも買うし、そのブランドを信頼していれば、少し機能の違うものを買うときにまた選んでくれます。ブランディングは成功体験の積み重ねというまっとうな理由で行われて、WebサイトやSNSのあらゆるところで接客が行われます。
多言語ローカライズ
DTCブランドは、新しい価値観でのブランド哲学が面白いですが、仕組みとして重要なのが多言語ローカライズです。
商品を海外へと発送するには、ヤマト運輸、DHL、FedEXなどで対応できます。他通貨への対応も、クレジットカードやPayPalでクリアできます。たとえばアメリカでは、日本のヤマト運輸のように優秀な配達がスタンダードではないので、商品の購入からお届けまでにかかる日数はあまり神経質になる必要はありません。
多言語ローカライズに適したシステムとしては、Shopifyなどがあります。WordPressと同じようにデザインテーマをカスタマイズしたり、プラグインのインストールを行えます。必要な機能を効率的に追加できる一方で、センスのない時代遅れなコードを簡単に生成できてしまいます。素晴らしいシステムを使うことと、素晴らしいWebサイトであることはまったく別の話です。
パッケージ
DTCは共通してパッケージを作り込んでいる印象です。ユーザーが商品を受け取ってからの体験を、成功体験にする仕組み作りです。パッケージを作り込むといっても大げさな箱で過剰包装することではなく、ブランド哲学に基づいて、なぜそうであるかを明確に説明できるまでにパッケージングを洗練させたという意味です。
海外発送に適したかさばらないものや、環境に配慮した梱包材、在庫管理によるゴミを出さないためのオーダーメイドシステム、生分解可能な素材の使用などもブランド哲学に含まれます。ブランドは継続されていくものなので、継続可能なものを使う必要があると考えます。ブランド全体を垂直統合して考えれば、商品を購入したユーザーが体験することすべての対してブランド哲学が反映されている必要がありますよね。
いまから10年ほど前にさかのぼって
ここから先の内容は、10年ほど前に下書きを書いていたものです。自分が見てきたもののメモとして残しておく価値があると思ったのと、こういう過去のものは平成に置いていこうと思ったので、書き上げた次第です。いま読み返すと、いい感じに平成の終わり感が漂った仕上がりになったと思います。
ブランド探しの旅
アパレルブランドが集まる展示会に足を運びました。誰かの会社のためにではなく、自分の会社やブランドのために必死になって頑張っている人に魅力的に感じるようになりました。ブランドっていったいなんだろう?ブランディングっていったい何をすることだろう?そこから、ブランドの答え探しの旅が始まりました。
結果からいうと、ブランドとは、受け取る側が勝手に感じ取っているものだと思います。ブランド側が発しているものだけではなく、受け取る側がイメージを膨らませて受け取っているものです。
無用の用という言葉があります。服を5着買っても実際に良く着るのは2着ほどかもしれません。残りの3着が必要なかったかと言えばそうではなく、その3着があったからこそお気に入りの2着を選ぶことができたという意味。結果的に無用となったものをムダだと思うか必要ととらえるかは考え方次第。視点の違いで世界は大きく変わります。この哲学も、多くのアパレルブランドの中にありました。
記憶からの補完
たとえばスーパーで売られている肉を見て「美味しそう!」と思うかも知れません。でも生肉ですよ?道に生肉が落ちていて同じことを思う人はそういませんよね。それでもスーパーの生肉が美味しそうに見えたのは、過去にそのパックされた生肉を調理して食べた時の味をイメージとして覚えているからです。記憶はいま目の前にあるものの価値を大きく変えることがあります。ネットもリアルも同じように心を動かされるし、体験するものです。そういう意味では、前例のないものからはイメージを補うことはできません。
目の前にある「物語性」こそが、人のイメージ補完を働かせるためのスイッチになるのだと思います。たとえば洋服の機能性や品質は、そのまま打ち出すと「物語性」はありませんが、そこにブランド哲学があるならば、人の心を動かすものになり得るのだと思います。
アパレルブランドやセレクトショップの仕組み
あくまでも一例ですが、アパレルブランドやセレクトショップの仕組みです。たとえばカットソーを扱ったブランドだとします。
ブランドの哲学にもとづいて今季のコレクションのテーマを決め、カットソーのデザインを行います。デザイナーがカットソーの生地や形、色などを決めます。副資材などアクセサリーがある場合はそれも。次にパタンナーが、デザイナーの意図を汲み取ってカットソーのパターンを起こし、工場でサンプルを制作してもらいます。ここで、デザイナーも含め調整などが行われます。そもそもデザイナーとパタンナーが兼任である場合もあります。
サンプルがイメージ通りにできたら、次は工場にカットソーの生産をお願いします。生産する数があまりに少ないと、工場が請けてくれないことや、割高になってしまうこともあります。その場合、すでに既成品としてある商品にプリントや加工をするなどの方法もあります。既成品にブランドのロゴを入れたりプリントされたものは、OEM商品と呼ばれ、OEM商品の作成に特化している業者もあります。そうして出来上がった商品が工場からブランドへと納品されます。検品は多くの場合オプションとなります。
商品の「完成」を国内で行えば国産と表記できるというグレーゾーンもあります。歩留まりが悪くても、国土と労働者が多くて安く生産できる国に工場が集中します。安く作れるという理由だけで海外生産を続けていると、いずれ国内生産と同じくらいに生産価格があがってきます。そうなった頃には、国内生産ができる技術が国内にはありません。
委託と買取
ブランドが自店舗をもっている場合をのぞいて、ブランドの商品をお店に並べるためには、セレクトショップなどで取り扱ってもらう必要があります。様々な規模のバイヤー向けの展示会で、バイヤーと交渉します。セレクトショップで商品を扱ってもらうためには、大きく分けて「委託」と「買い取り」があります。
委託の場合、ブランドがセレクトショップに商品を置いてもらい、それが売れ残ったら返品してもいいという契約です。ブランドが在庫を抱えてしまうリスクがある一方で、セレクトショップにとってはリスクが少ないので、商品を置いてもらいやすいというメリットがあります。
買取の場合、ブランドがセレクトショップに商品を買い取ってもらいます。それが売れ残ってもブランドに返品されることはないので、セレクトショップがセールなどで対応することになります。ブランドの側のリスクは少ないですが、セレクトショップ側にリスクがあります。
カットソーの原価(商品の原価に加えて人件費や広告費を加味したもの)は、売値の70%などです。これは掛率といいます。10,000円の7掛けは、7,000円ですね。ブランドの直営店やセレクトショップではセールが行われます。多くの場合、30~80%オフのセールですね。
商品を30%OFFで売った場合、ほとんど原価での販売ですが、原価分の回収はできます。80%OFFで売った場合、原価を切っていますが、このまま売れないよりは少しでも回収ができます。これが「30%OFF→50%OFF→70%OFF→80%OFF」のように段階的にセールが行われる仕組みです。また、新しいコレクションの販売開始の時に、このセール品を置いておくことで、全体の売上げアップの相乗効果も期待できます。単品では赤字であっても、全体で利益をだすという考え方です。おそらく多くの人には、セール中だけど一部セール除外品があるのだなと見えているはずです。セール時期にお店にいったら必ずNew Arrivalタグの付いた商品を見かけると思います。
会員制ファミリーセール
ハイブランドは自社のネットショップであからさまなセールは行えません。クローズドな場所、会員制のファミリーセールなどでセールを行ないます。ブラインドでセールを行えることと、ファミリーセールのサイトには常にアンテナを張った購入意識の高い人が集まっています。
決算は4月じゃない
一年を通して売上げの落ち込む時期があります。冬物のコートなどは利幅が大きく、夏のカットソーは利幅が小さいです。年に数回のコレクションだけではなく、その端境期も重要な時期です。
大きな会社はなぜか決算を4月としている場合が多いけれど、決算月というのは会社を設立するときに決めれるものです。その業界の繁忙期、つまりは利益が多く出る時期を外して決算月を決めるべきで、ベストな決算のタイミングは繁忙期の直前です。繁忙期=売上が伸びる時期なので、その利益をその後1年間かけて必要な経費として使って行くことができるからです。逆に、繁忙期直後に決済を行うと、無駄に税金を多く払うことになりバタバタの中いいことなんて何もありません。
PARCOの事例
Webでのマーケティング施策が、リアルでも通用するようになっています。むしろ、Webでは通用しなくなったことがリアルで行われています。ある意味ではWebがリアルのように振る舞うことができるようになり、リアルの中に溶け込んでいくようになったとも言えます。
リアル店舗を起点とするオムニチャネル戦略
もともとPARCOでは、ブランド本部が運営する一般的なECサイトを提供していたが、ECとリアル店舗を連動させる施策(=オムニチャネル)へと軌道修正していった。リアル店舗を起点に「ショップブログ」「カエルパルコ」を提供し、オムニチャネル用のプラットフォームを作っていった。
ページ上部には館の情報があるが、中央から下には「ショップブログ」が並ぶ。「カエルパルコ」というショップブログをベースに商品を販売している。PARCOのショップブログには「10,000記事以上/月」の記事があがっている。ブログに店頭ECの機能を追加したイメージ。店頭に来てもらうきっかけに繋げたいという狙いがある。投稿ページには「お取り置き or Web注文」というボタンがある。取り置き期間は1週間。Web注文の場合も店頭に連絡が行く。店頭在庫をそのまま出荷し、店頭に売上が計上される仕組み。
普段接客でやっているようなことをネット上で行っている。手書きのメッセージやノベルティを付けてもらえる。つまりは店頭スタッフの目利きによるキュレーションEC。販売員ならではの感性、コーディネート/スタイリングを提案して、購入へのストーリー作りを行っている。
オムニチャネルへの壁とは、推進するためのハードルとは
これまでの問題として、本部ECの売上と店頭売上でよく起こる問題として、店頭で「顧客のファン化」を実現できても、その顧客を本部が吸い上げていってしまう。そのため、企業本部はリアル店舗への関心が薄く、リアル店舗はECへの関心が薄い。むしろ敵対心を持っていることが多い。会社の仕組みが、自社のネットショップとリアル店舗とを競合させている。リアル店舗は店頭で売りたいが、接客の成果を本部のECに取られてしまう。顧客や成果の横取り。販売代行/フランチャイズも特にそう。しかしこの問題は顧客にとってはどちらでもいい。毎日商品と顧客と向き合っている店舗スタッフだからできることがある。リアル店舗を連携するシステムであるため、システム倉庫物流/仕入れの問題をクリアしやすい。
スマホアプリ
PARCOがスマホアプリをリリースした狙いは、Web接客をもっと増やすこと。アプリによって多くの情報を得ることができる。 性別生年月日よく行くPARCO/などの属性情報、属性、行動、好みなど。メインコンテンツはショップブログを読み込んでいる。どの記事がいいねされているかわかる。チェックイン機能で現在地もわかる。アプリを開いた場所がマップでわかる。エリアマーケティングやリアルタイムオファーが可能。
Beaconアナリティクスで館内店内の人の流れを見える化している。顧客の横方向縦方向の動きがわかる。GoogleAnalyticsの行動フローのようなグラフで、人の流れを分析できる。リアルマーケティングがWebマーケティングとして独自の進化を遂げて、それがまたWebからリアルへと帰還してきた。Webであろうがリアルであろうが、人の行動に大きく差が出るものではないということ。
パルコカードのようなハウスカードは、顧客の属性情報を得るための仕組み。CLO(CardLinkedOffer)によって、サービスに登録した個人情報とクレジットカードの購入情報とか紐づけられる。サービス、クレジットカードの片方だけでは得られなかった情報をお互いにカバーしあうことで、サービス提供側がより多くの、そして正確な情報を得ることにつながる。
さいごに
最後はざっと書きましたが、あらためて後半の記事は10年ほど前に下書きを書いていたものです。いまでは古いと感じる部分や、いまだに変わらないものがあったり。未来のネットショップに向けて、変えるべきものを見つける手がかりになれば幸いです!