小説を書きたい人の本」を元に、要約メモしておきたいと思います。

小説を書く前に知っておきたいこと

01_小説とは、小説を書く行為とは何かを知る

  • 基本的なストーリー展開が同じだとしても、登場人物や背景の設定により作品のオリジナリティーを出すことができる。
  • 小説を完成させるためには、大変なエネルギーと時間のロスを要する。そのため、作家はかなりの集中力と忍耐力、そして持久力が求められることになる。
  • 小説を書くうえで世の中のモラルに準じる必要は決してない。むしろアンモラルであるべき。毒のない小説は読んでいて面白くない。

02_社会、人間への興味が創作のヒントになる

  • 作者のメッセージが不明確な作品は面白くない。また時代・歴史小説であれ何であれ、作品に「現代性」を盛り込む必要がある。
  • 小説は社会を舞台にして人間のありようを描くもの。そのため、書き手に人間に対する興味がなければ、小説を書くことなど決してできない。
  • 人間と社会の両面から、さまざまな角度で物事を観察していき、そこで感じ取ったものを言葉にすることが、小説の第一歩。

03_複眼の思考を身につけよう

  • 人間観察が単なる観察で終わってしまっては意味がない。創作に役立てるためには、その背後に潜む真相までを類推する必要がある。
  • 小説家はある一定の価値観で物事をとらえ、人間の言動・行動パターンを画一化してはいけない。常に「複眼の思考」で物事を観察すること。
  • 小説を書く人にとって、表現の乏しさは致命的。そのため、日ごろから言葉に対して敏感であってほしい。自分の目の前で起こった出来事をどんな言葉で表現できるか、また別の言葉で言い換えることができるだろうか、と考えておくこと。

04_妄想→想像→構想→創造により、小説は誕生する

  • 自己満足の世界で終わっている小説は、日記や投函させることのない手紙と同じようなもの。それは小説とは呼べない。読者に伝わってはじめて、小説は小説として機能する。そのために、書き手は読者に伝わる言葉、表現を選び取る必要がある。
  • 冒頭部を呼んだだけで結末が分かるような小説には誰も見向きはしない。読者の意表をつくことが重要。それは面白い小説の絶対条件。
  • 実体験だけでは非常に限定された物語世界しか描くことができない。しかし、想像力を駆使すればいかようにも物語世界を気づき上げることができる。

    05_小説とエッセイの違い

  • エッセイは書き手が自分の経験のみを頼りに描くため、その作品世界に入っていきやすい。
  • 小説とエッセイの最大の違いは主人公の「視点」。エッセイの場合は、常に第一人称「私」であり、それは書き手本人でもある。一方、小説の場合、その視点は作者の意図により、第一人称(必ずしも「私」=「書き手」とはならない)にも、第三人称「彼、彼女」にもなり得る。
  • 小説はフィクションであり、虚構の世界を描いたもの。だが、ディテールの部分で嘘をついてしまうと、小説としてのリアリティを失ってしまう。

06_小説を書くまえにやっておくこと

  • 理想とする作品を見つけたら「なぜその作品が自分にとっての理想なのか」を言葉にしてみること。そうすれば自分自身が目指す文章、表現、物語というものがより明確になっていく。
  • 模写する際は、文体ではなく、文書のリズムに意識を高めること。「句読点の位置」や「体言止め」「倒置法」など、それぞれの作家がリズミカルな文章にするためにどんな工夫をしているかに注意する。
  • 書き手として、他人の作品を読むときは批判的かつ分析的に読むことが重要。さらに、「自分ならどんな書き方をするか」と自身の作品と重ね合わせながら読むことも大事。

実際に小説を書いてみよう

01_主人公をとにかく前に進めよう

  • 主人公を時間的・空間的に前に進めること。その課程を描くことで小説は誕生する。
    • 主人公を「前に進める」と同時に、過去を「振り返る」ことも大事。「フィードバック」が主人公をさらに前へと進める。
    • 一度、執筆を始めたら最後まで書き上げること。途中で書き出しに戻り、また最初から書き始めるのは労力の無駄遣いである。
    • 創作途中で別の筋道を思いつくことがあっても、それは気の迷いだと考え、あらかじめ決めたルートで書き上げてみること。

    02_小説の設計図となる構成・プロットを組み立てる

    • 「構成」と「プロット」は同じ意味であり、物語に必要不可欠な主要場面を決定し、自然なストーリーになるように、それぞれの場面を割り振っていく作業。
    • 経験豊富なプロの作家は、構成を頭の中だけで組み立てることができるが、初心者にとっては至難の業。はじめのうちは実際に紙に書き出してみよう。
    • 「プロット表(構成表)」の完成により、主人公の進むべきルートが決まる。あとは順番を追って書いていけば、小説は完成に向かっていく。

    03_書き出し

    • 主人公をなるべく早めに登場させること。そして登場させたら、年齢、性別、職業、容姿など、主人公に関する具体的な情報を明示すること。
    • 書き出しで物語のテーマを全て言い切る必要はない。大事なことは、最後の1ページまで読者を飽きさせないで読ませること。
    • 時制の転換は行っても「現在→過去→現在」と押さえ気味に。多様し過ぎると、読者はそれを追うのに精一杯になり、ストーリーへの集中、興味が薄れてしまう。

    04_登場人物の設定

    • 読者の共感を呼ぶためには、彼らの感情をプラスにもマイナスにもかき立てる人物を描くこと。
    • 境遇や性格など、主人公と相反する人物を描き、その対立を描くことは、ストーリーに幅を持たせる有効手段。
    • 主要登場人物の人数の目安は、短編で主人公+2〜3人ほど。長編の場合は、主人公+10人ぐらいは必要。
    • 登場人物の詳細な職業設定が物語をさらに膨らませる。

    05_風景描写

    • 三次元である現実世界の風景を言葉という一次元の世界に落とし込むことに、風景描写の難しさがある。
    • 克明な風景描写を描くときは、そこに何らかの意図を組み込む必要がある。
    • 心情の変化により、いつもの見慣れた風景が全く別のものとして見えることがある。

    06_心理描写

    • 主人公を前に動かすことで心の変化が生まれる。心理描写とは、その変化を描くこと。
    • 心理描写の表現を増やしていくには、常日ごろからの人間観察が大切。
    • 人間の心理は非常に複雑なものである。その複雑な心理を、誰もが理解できる言葉で描くことに、本当の難しさがある。

    07_視点について

    • 第一人称で描く場合、描き手は主人公と同化し過ぎないこと。自分だけの世界に没頭しないため、常に一定の距離を保つ必要がある。
    • 第三人称には「一元視点」と「神の視点」の2つのパターンがある。「一元視点」とはある特定の他者の視点で物語を描くこと。語り手と主人公を別にできる点が第一人称と異なる点。
    • 「神の視点」とは、書き手の視点を物語世界の上に置いて、全体像を眺めながら描くこと。視点の移動により全ての登場人物に立つことができる。

    08_物語の演出方法

    • 全ての小説には演出があり、それがないものは小説ではない。何気なセリフや行動も演出になりうる。決してドラマチックな展開だけを指すものではない。
    • 「シンデレラ曲線」は、起承転結と同様の意味を持つ。それは、全ての物語に当てはめることができる。

    09_会話

    • 小説の会話は日常のそれとは異なる。書き手の都合のいいように登場人物に語らせるべき。
    • 会話の主な効用は、語りの部分で説明しきれない情報の提示。
    • 複数の男女が混在するときは、発言者が誰であるかを明確にすること。そのために、セリフの中に人物特有の口調や仕草を入れる工夫も必要。

    10_エンディング

    • エンディングにおいて物語を総括するような説明は不要。
    • 最後の判断は読者に委ねるくらいの気持ちで描くこと。読み終わった後に「その後の世界を知りたくなるような余韻を残す」ことが大事。
    • 主人公の視点で終わらせるようにしよう。

    11_句読点と文体のリズム

    • 句読点を打つリズム場所は、最終的には書き手の生理感覚に委ねられる。基本的にはどこに打ってもよい。それが書き手のリズムであり、個性となる。
    • 読点が多い文章は、読者にやわらかい印象を与える。
    • ステレオタイプの擬音や比喩表現では、読者のイメージを喚起させることはできない。

    新人文学賞に応募してみよう

    01_新人文学賞の選考はこうして行われる

    • 作品を書き上げたら、たとえ自身がなくても新人賞に応募してみること。人に読まれるという意識を持つことで、技術がさらに向上する。
    • 応募する場合は、それぞれの新人賞の向上と対策について確認を行い、自分の資質に合った賞に応募すること。それは受賞のために必要不可欠。
    • 主要な新人賞では選考は三次選考、四次選考が行われる場合も。その一次選考で全体の9割は落とされる。まずは一次突破を目標にしよう。

    02_必ず守ろう!応募時の最低限のマナー

    • 作品の二重募集は、絶対にやってはいけない。また出直し応募をする場合は、必ず推敲を行ってから応募するように。
    • 梗概とは物語の「あらすじ」を書くこと。ブックガイドや帯のキャッチコピーとは違う。
    • 応募規定内の最大枚数に近づけて書くことは大事。原稿枚数が増えれば、それだけ物語に厚みを持たせることができる。

    03_選考委員に気持ちよく読ませる原稿を書く

    • 選考の初期段階では、予備選考委員は100編以上もの作品に目を通すこともある。読みやすい原稿を書くことは選考突破に必須条件。
    • 原稿は必ず縦書きにすること。また、行間が狭く、字間が広い原稿は非常によみづらい。見た目の読みやすさにも気を遣おう。
    • 小説の文章は、メールとは違う。絵文字やマークは厳禁。最低限の文章作法は守ること。

    04_新しい才能を発掘するのが新人賞の目的

    • 応募作品の半分は、はじめの枚数が不要なものばかり。このような作品は必ず落選する。書き出しはもたもたしないこと。
    • 選考のポイントは「構成力」「文章力」「着眼点」。その中でも「着眼点」が最も重要。
    • 他人の真似事をしていては、新人賞は獲得できない。物語の類型ではなく、典型を書くようにしよう。

    05_作品の顔となるタイトルの付け方、決め方

    • タイトルは小説の顔。読者を物語の世界に引き込む絶好の機会だと考えよう。
    • 洋楽から取ったカタカナ・タイトルや流行語はなるべく用いないこと。その時点でオリジナリティーが薄れてしまう。
    • タイトルがあまりに漠然とし過ぎるのも良くないが、物語の結末が分かるようなものはもっと良くない。

    06_作品の完成度を高める推敲の注意点

    • ワープロ特有の変換・タッチミスには気をつけよう。また、文末などでの表現のダブりも確認すること。
    • 小説を書き終えた段階では、その作品は未完成だと考えること。物語全体を再構成することで完成型となる。
    • 作品を書き終えたら、最低1日は距離を置くこと。客観的な視点で作品と対峙することで、書いている途中では見えなかった修正点が見えてくる。

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